38、偽装

実は、二学年から社交会圧が強くなっている。

親族からではなく、学園側からの社交場参加への圧。

王宮で行う卒業パーティが関係している。

卒業生にその親族、関係者と大規模なパーティだったりする。

だから、二学年からは定期的にパーティが行われている。

もちろん参加せずに済むものは、不参加で通してきた。

だが、とあるパーティは不参加不可の通達が来た。

しかも、親族でも可のエスコート付き。

親族連れて行ったら、婚約者探してますと思われる。

婚約者やその候補を連れて行くのが一般的というやつだ。

「シェル!仕立てに行くわよ」

「すでにありますが」

「貴方のよ。いないなら作ってしまえというやつよ。時間外特別給金色付けてあげるから、今回は頼むわ」

「守銭奴ではないです」

「なら、何なら動くの?」

「……特にないですね」

「分かったわ。では、ただの業務の一つよ」

「かしこまりました」

「では、行きましょう」



「あの方はどなたなのかしら?」

「あの人は、誰か知っているか?」

ヒソヒソと聞こえる声を無視して、会場内を進んでいく。

二人で立食エリアで小腹を満たしていると、そこにストレート女子、今日は緩やかウエーブが取り巻きとそのエスコートを連れて現れた。

「……モーレイ様。ご機嫌よう」

「ご機嫌よう」

チラリとシェルを見て、笑むと口元を扇子で隠した。

「この会の為に気を揉んでいたのが嘘みたいですわ」

こちらも扇子を取り出し、口元を隠す。

ふっと、何度か見たことあるマウンドに集まった野球選手を思い出す。

彼らも口元をグローブで隠していたのは、話している内容を周りに教えない為で、この扇子と用途は同じ。

「貴方方の従者も素敵な殿方に見えてよ」

取り巻き達やエスコート役として男装した従者達がこちらに会釈。

彼女達とは、主に相談事だが、たまに話す間柄になっていた。

その一つに今回のシェルを男装させて、エスコートさせてしまおう作戦をすると話すとノッてきた。

「ゆとりが出来ると、目線が広がりましたの。今では学園にいる殿方が幼く思えてしまって」

「実際に幼いと思いますよ。私達もですけどね」

「ええ、来季より社交授業を少し減らし、自己鍛錬に当てようと思いますわ。モーレイ様のおかげですわ」

「いえ、そう思える貴方方がいたからこそですわ。私は世間話しかしておりませんもの」

「そのような謙虚な姿勢も見習いますわ。……それとダンスにシェルさんをお借りしても良いでしょうか?」

「ええ、私もセカンドダンスにお借りしても?」

「喜んで」

ダンスを最低二人と踊ることもこの会で必要、だから彼女たちの申し出は願ってもないこと。

彼女たちがいなければ、二人目はどうしようかと悩んでいたところだ。

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