37、ストレート長髪女子

数人の男子を侍らす女子を見ると、乙女ゲーか漫画かと思ってしまう。

ヒロインがどうのこうのでいうあれだ。


そして目の前の女子の周りには、男子が何人もいる。

それを少し離れたところから見る女子の一団。

長いストレートな髪の女子がこちらを自分を見た。

目があっただけ、ストレート女子は目をそらした。

そのままそれらの横を通り過ぎて、しばらく歩いていると、後ろから声をかけられた。

「あの、モーレイ様」

学園で誰かに呼ばれるのは久しぶりだ。

呼ばれて見るとストレート女子とその取り巻き達。

先程の場所からは離れているので、侍らし女子はもう見えない。

「はい。何か」

「お久しぶりです。あの……少しお時間頂いてもよろしいでしょうか?」

ふっと一学年の時の隣席女子だったと思い出した。

名前は思い出さないが。

「お久しぶりですね。今ここではだめですか?」

ちょうど、目の前の彼女達が取るコマでは、使わないエリアで人通りは少ない。

「モーレイ様が大丈夫でしたら、かまいません。あの……彼女をどうお思われますか?」

「彼女とは?」

「失礼しました。先程の何人もの殿方と話していた女生徒です」

「何も思いません。……でももし、あの中に貴方や貴方のご友人の焦がれる方がいるのなら、早々に諦めなさいと伝えますね」

「なぜでしょうか?」

「あのように周りに奇異の目で見られてもよいと思う男性ですよ。碌な性格をしていないでしょう。もっと周りをご覧なさい。男性は星の数ほどいます。それに学園だけで決めるのは勿体ない」

その言葉にストレート女子やその後ろにいる女子がハッとした顔をし、ストレート女子の後ろの女子がぼそっとこぼした。

「……私達は早く婚約者を見つける為にここに……」

「ここは、学び舎。婚約者を見つける為だけの場所ではなく、自分の知性感性を向上させる為の場所。もっと素敵な女性になれば、もっと素敵な男性と出会えるでしょう」

「……そう思われますか?」

「ええ、一生に関わるな大事な決定をここで決めるには、ここはあまりにも狭すぎます」

「……ありがとうございます。少し気持ちが落ち着きました。あの……またお声をかけてよろしいでしょうか?」

「私達は同じ学園に通う学友です、いつでも」

ストレート女子らが、パーっと笑みを浮かべた。

「ですが、私は授業の空きがなく、放課後も用事を入れていることが多いので短めに」

「ええ、存じております。貴重な時間を割いて頂きありがとうございます」

皆にカテッシーされながら、踵を返した。

ストレート女子に全コマ埋めを知られてた。


「一学年から全コマを埋めている女生徒はアン様だけですから」

シェルに学園での話をすると、そう返ってきた。

ある意味有名人になっていたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る