36、護衛は就活へ-騎士
統括侍長室へと向かい統括侍長への取次を頼み、統括侍長応接室の横にある控室へと向かおうとしたら、応接室で待機と言われた。
しかも今度は、お茶や菓子受けも用意されていて、寛いで良いとの言葉を受け、二人は若干緊張しつつ失礼のない程度で寛ぐ。
「……本当に疲れたわ」
「ああ、やっぱり俺はこっちは無理だ、どっちかというと騎士の方が……」
「……騎士の方々、かっこよかったわね。色々あったけど、やはりここで働きたいわ」
二人の話が盛り上がり出した時、いきなりドアが勢いよく開いた。
騎士達の静止も聞かず、ズカズカと乗り込んできたのは、父に関わるなと忠告されたあの成金家族。
そのまま、ノックもせずに統括侍長部屋を開け放って、部屋の中に入る。
するとまたドアが開き、先程会った騎士が数人引き連れて部屋へ入ってきた。
こちらに気付いた騎士は、こちらに笑み、そのまま統括侍長室へと入っていく。
怒鳴り声が聞こえたら、次はヒッーっと悲鳴。
騎士さんが武器で対処と予測。
ワギャワギャ騒ぐ成金を連れて統括侍長室を出る騎士達の中に、あの騎士はいない。
すると統括侍長付きより声がかかり、中へと通された。
「こちらの騎士より話がありますので、同席させております。まずは本日の体験はみな良い仕事をしたと、報告を受けております。ご苦労様でした」
3人でお辞儀すると、すっと騎士が前へ出てきた。
「名を名乗ることは出来ないが、感謝は述べたい。3人のおかげでやつらを捕らえることが出来た、感謝する」
「えっ、俺等は何も」
「いや、3人のおかげだ。ハイシリーズ嬢がギルドへ依頼を出し、それを君達が引き受け、君がハイシリーズ嬢を守りながら給仕し、そして君が私に声をかけたことも全て。王宮騎士はギルド依頼への直接干渉は出来ない、だから君たちが動いてくれたことで、我らが補助を兼ねて動くことが出来た」
最初の君でギルを手で指し、次の君で私へ手を向けられ、最後は両手の平を広げこちらへ差し出してくるの見て、ジェスチャー騎士と名付けることにした。
「王宮勤務になれば彼らが対処出来ますが、まだ試験を受かっただけでは何も出来ないのです。ギルドを通ったことで、補助的役割でも大幅に可動域が広がったのです」
騎士と統括侍長の説明で、ある意味でオトリのような役割だったのだと気付くが、そこは二人には黙っておいた方が得策だろう。
「補助だとしても動くとなったら裏まで探ることが出来てね。おかげでなかなか尻尾を掴ませなかったハゲデブと先程のナリキーナも逮捕出来きることになったよ、本当に感謝する」
二人はいえいえと謙遜の姿勢。
私は、それを眺めていると騎士にチラリと見られた。
「それと三つ星ギルド所属の二人をスカウトに来たのだが、どうだろうか?」
「あっ、俺……」
何か言おうとするギルを遮る。
「ギルドへの報告に乗せても?」
「それは困る。スカウトはなしにしよう。少しでも……これも報告するかい?」
「少しでも、としか」
「手厳しい。では、私は席を外すよ。統括侍長、失礼したね」
「いえ……では、本日の……………」
統括侍長より本日の給与も頂き、一連のゴタゴタも含め終了して、また馬車での帰路。
帰り道、ふっと見かけた噴水を眺めながら思う。
噴水にも実力者はいるようだが、私はあくまで星だと。
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