35、護衛は就活へ-決心
ギルドポイントも獲得し、内心ホクホクで喜んでいたのが良くなかったようだ。
体験就活を終え、三人で最初に通された統括侍長室へに向かっていると、隣に向けていやな視線を感じた。
チラリとそちらを見ると、ハゲデブ登場。
今日は王宮内に人が多い、その隙間を見つけて声をかけようとしているのが見え見え。
人目を気にしているのは、妾にまた逃げられたと新聞に載ったからかとも思ったが、何かがおかしい。
保護対象でもあるミリーを挟んで歩いてるから、直接はまだ来てないが、統括侍長室まではまだ遠い。
もうしばらく歩くと人通りも少くなる区画もある。
さて、どうしようか。
「ミリー、決心付いた?」
「どうし……ヒッ……」
振り向いたミリーはハゲデブを見付け、止まりかけたミリーの腕を掴み、歩かせる。
「止まるのは失策、歩いて」
「そうでした。ごめんなさい。あんなに練習したのに、本物はやはり違うのですね。嫌悪感が全身を包んでおりますわ。……アン、うまく出来るかしら……」
「練習相手が幻覚で見た目を変えたギルでは、足らなかった?」
「気持ち悪さが全然違いますわ。言葉は悪いですが、あれには嘔吐感を感じてしまいますわ」
「なんか、あいつおかしくねぇ?」
ハゲデブの不可解な様子もギルも気が付いた。
ミリーをチラチラと見ながらも、目線が誰かを探しているよう。
アンは少し考えてから、近くを歩いていた優しそうな騎士に声をかけた。
「申し訳ありません。少し宜しいでしょうか?」
騎士は、こちらが侍女服でも関わらず、足を止めてくれた。
「それは学生徽章だね。何かあったかな?」
誰がどの所属なのか、徽章で分かるようになっている。
三人共、学生徽章を付けていた。
「不躾ながら、少しお時間を頂きたいです。友人がとあるお方に目を付けられていまして……」
そっと、ハゲデブの方向に視線を送ると、騎士さんは目線がバレないようにチラッと確認すると、頷いた。
「それは大変だったね。今から統括侍長殿へ報告かな?」
「はい。もし可能ならば、統括侍長室まで同伴をお願い出来ないでしょうか?」
「的確な判断だ。だが、それは必要ない。……少し待ってくれるかな。ちょうど令状が出たところでね。体験の最後に捕物見学も加えるといい」
そう言うと、騎士さんは右手を左の肩に乗せると、指で野球のサインのように数字を表すと、その手をすっとハゲデブへ手を下ろした。
すると、多方から騎士が現れ、ハゲデブを囲みあっという間の捕者劇。
「このような出来事は、滅多に起こらない。王宮は私達が守るから、安心して仕えるといい」
そう言って、優しそうな騎士さんは去っていった。
ミリーとギルが理解する前に終わってしまい、少し説明が必要になった。
そして、残念なことに、ハゲデブへの牽制練習は意味のないものへとなってしまった。
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