34、護衛は就活へ-希望先

よほどのことでない限りド新人を表には出さないはずが、出来る先輩の前でやらかした。

すり鉢状の貴族用コロッセオには、三人掛けソファーが綺麗に並んでいる。

ソファーの間を手を上げた客にビアガールのように歩き、飲み物を配って歩く。

その時に、グラスが空きそうな客に合わせて一列歩くごとに飲み物を品をアレコレ変えた。

あの男性はビア好き、あの婦人はシャンパン好き、あの男性はアルコール過敏症、あの女性は横にいる男性の飲み物に合わせたがり……などなど。

これでも貴族の出であり、社交界にも母の付き添い等で幾度も参加していた時に覚えたアレコレで、察して動き回ってしまった。

それにより、この子は出来る子判定をもらってしまい、先輩が連れ出したのは最上位の一個下の貴賓席。


先程のよりも具体的な名を知っている方々への対応。

それこそ、我が家の大黒柱の母のいるよな場所を対応させてもらった。

問題なく給仕して、母のところへ。

母は、梅酒だろそれと思われる、塩分強めの甘みの少ないのウーメプラム酒の原液酒。

アルコール20以上あるが、あれを割らずに飲むのが好みだから、それを持っていくと、ニコリと笑みをこちらに寄越した。

「貴方、見込みがあるわね。うちで働かない?」

「有難きお言葉、先輩へ伝えておきます」

「良い返事を待っているよ」

こそりとやり過ぎっと伝えると、お茶目な笑みで誤魔化す母。

「パっ……コホン。私は83年ものブランデーを」

パパと言おうとしてしまった父は咳で誤魔化し、手元にない物を伝えてきた。

「かしこまりました。用意に少々お時間を頂きます」

ブランデーが苦手な父がそう言うということは、ここから離れろって意味でもある。

母を見ると、目線がチラリとある貴族へと向けられていた。

前に見たことのある派手な装いの成金な男女と自分と同年代であろう女子と幼い男の子の四人。

「侍女スカウトしてる。近付かないように」

こそりとそんなことを告げてきた。

「かしこまりました」


先輩に、モーレイ家より遣いを頼まれたとその場を離れ、そのまま適当に時間を潰すよりもと、ギルドで簡単なお使いクエを受注し、ポイント稼ぎに移行した。

適度な時間で戻り、用意したブランデー(中身は父の好きなウイスキー)や二人が好きなツマミを渡し、しばらくしたら就業体験の時間終了。

スカウトからは逃げられ、ついでにギルドポイントもゲット。

改めて、先輩から誘われたが、今回は友人の付き合いで体験したのだと丁重にお断り。

就職先はもう決まっている、冒険者一択のみ!

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