30、依頼前-顔合わせ

三人と顔合わせした二日後、今日は開校記念日。

本来であれば、平日なのに休みというポイント稼ぎ日でもある。

だがしかし、残念ながら、三人と共に向かった先は依頼主のミリーという子の家。

「初めまして、ミルドレリー ハイシリーズと申します」

「アンという」

「アンは、俺らと同い年でもう一ツ星なんだぜ」

王宮侍女試験を受ける位だから、貴族だろうとは思っていたのだが、まさかここに来るとは思ってもいなかった。

「ステルサス ハイシリーズだ。カードの確認しても良いか?」

父親からの要望にカードを提示すると、父親は頷いた。

「確かに。ギルの父親は私の幼馴染みでね。彼から的確な上に丁寧でいい仕事をする子だと聞いている」

横がギルマス宅というのは、ここに来るまでにギルが隣ウチと指さされたことで知った。

その上、ダンとマイアは斜め前の二軒と皆ご近所さん。

庶民のダンやマイア宅があるここは庶民区。

その中でもこの家は大きめだが、庶民的な質素なお宅。

貴族が庶民区に住居を構え、その貴族が王国の宰相補佐となかなかな位置にいるというのは、母の小言の一つとして聞いたことがある。

話では知っていたが、それが目の前に来るのはまた面白い。

「どうも」

それらを自分から言わぬなら、ここは無難な受け答えがいいだろう。

ギルには、自分の身分や名前を明かさぬよう頼んだ。

契約魔法でと思ったがそこは留まり、信頼が大切なギルドのマスターの息子なのだから、裏切るなと念を指した。

これも後輩育成の一貫にもなるだろうと、かこつけて。

「……ほぉー、なかなか。うん、気に入った。改めて自己紹介しよう、宰相補佐役を勤めているハイシリーズだ。貴族だが広過ぎるのは苦手でな。貴族区に屋敷はあるがそこは客人や催事用で、自宅はここなんだ」

「改める?」

「いや、そのままでよい……さて、挨拶は終わったな。では、みんな依頼内容は確認したかね?」

「任せて!ミリーを守るよ!」

「本当なら一ツ星になっていたかったから、ちょっと悔しい」

「ホントッ!ミリーが行くときまでには一ツ星取るって意気込んでたのにこれだ。ミリーごめんな」

「でも三星までなったじゃない!凄いわ」

「同い年のアンは一ツ星だぜー、しかもソロ……」

ポイントだけを稼いで簡単に上げても、依頼難易度が上がって達成できなくなってしまう。

だから、星上げには毎回ギルマス判断の試験が隠れている。

それは実力と伴わない時の話で、最終的に実力が大事というだけ。

「ほらほら、今日は顔合わせなんだから、そのくらいで。では日程を決めようか」

残念ながら、今日が決行日てはない。

いつ行くか、みなの日時を合わせる日だ。

なによりも、重い腰を上げたがらないミリーの腰をあげさせる日でもある。

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