29、依頼前−幼馴染み

翌日ギルドに行くと、ゴツメン受付ことギルマスが顎をくっと右に動かした。

そちらは、依頼外素材鑑定コーナー。

覗くと息子以外にも二人の男女。

依頼外鑑定コーナーは、今は閑古鳥が鳴いている。

「あっ、こっちこっち。親父が朝はここがいいと教えてくれたんだ。あの……」

「アンと登録している、アンと」

「だよね。俺はスーギルで登録してるけどギルでいいよ。それとこっちは、俺の幼馴染みで……」

「マイアよ、よろしく」

「ダンだ。この人が一ツ星?」

「私が5星依頼を選んでいるところを見たの」

「確かに5星だけど、カード見る?」

疑ってるのかと思ったが、三人共何故か目がキラキラしている。

「見てもいい?」

少し困惑しながらカードを見せると、スゲー、凄いの絶賛が降りかかってきた。

「スゴーい星が埋まってる」

「マジでスゲー」

「早く星なりてー」

以外にも称賛されて、困惑しつつ少し照れてしまう。

「あっ、ごめん。今のところ俺らの目標でさ」

「同じ歳なんだろ、それで一つ星って凄すぎるわ」

「えっ、同じ歳?スゴーい」

噴水と違って、星は完全実力主義。

貴族であっても、いくら金を積まれても不正不可で、ポイント稼がないと星は貰えない。

なおさら、ボーナスポイント大事!

「もういい?」

食い入るように見ていた二人が、騒いでいたことに少し照れているのを見ながら、カードをしまう。

「それで、依頼というのは?」

ギルに目を移すと手元の紙を差し出してきた。

見ると護衛依頼の依頼書。

「実は、その依頼の護衛対象が俺達の友達で、王国に行くことになって、その護衛。俺達の気付いたら一緒に遊んでた位で、それなのにミリーが行くだろ。最後に送ってあげたくて。でも護衛依頼は最低5星が一人でもメンバーにいなきゃダメだから」

次星になる条件に下星とのパーティーがあるが、もう一つ護衛依頼達成もある、二つ一気にクリアと二兎得てしまうぼた餅案件。

チラリと裏が?と思ってしまうが、目の前の三人には感じられない。

「……依頼内容分かった、引き受けるけど、日時が書かれていないのはなぜ?」

「あっ、それはミリーが……」

「あのね。王宮侍女試験に合格したから行くんだけど、でも王宮勤めのディーブ卿に……妾に来ないかと言われて、もちろん断ったけど、王宮行ったらまた会うことになるから少し悩んでて」

「王宮勤めのディーブ卿って、あのハゲデブの?ディーブ ケーナァーイシ?」

「えっ?知ってるの?ミリーがハゲデブとは言ってたけど」

「二日前のゴシップ紙にも載ってる」

会ったこともあるが、ゴシップ紙に載ってることの方を教えた方がいいだろう。

「確か『ディーブ卿また妾に逃げられる』だったと思うけど……」

依頼外鑑定コーナーには、鑑定待ちスペースもあり、そこに新聞もあったなと探すとすぐに見つけた。

「ほらっ、これがそのハゲデブ」

そこには好色そうなハゲデブが紙面の一角に載っていた。

「うわっ「すっげ「ハゲデブ」」キモッ」

この三人に裏はないけど、依頼の方に裏があったようだ。

美味しい話には、裏があるー。

これテンプレともいう。

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