26、テスト

『ゆるゆる』学園気質は、二学年になると『ゆるっ』位になるが、テストだけはキッチリになる。

そして、学年上位は貼り出されて、晒し者に。

各教科ごと5位まで、そして取得人数の多い五教科点数が合算され、総合順位として、10位まで貼り出される。

晒し者になりたくはないと、枠外を狙ってテストを受けているアンが、やっちまった。

楽しく受けていたあの付与魔法技能授業のテスト。

もちろん、手を抜いていたが、他の教科とは違いテストの日だけ抜いていた為に、教科担当教官にバレた。

なので、授業終わりに呼び出しがかかる。


教室横の資料部屋に入り、示された席に座った。

「さて、モーレイ。テストの手抜きの件だが、何か言うことあるか?」

「……見逃して頂きたい。目立つのは極力避けるというより、一欠片でも邪魔になる」

「何の?」

「言えない、見逃して頂きたい」

「実力を隠すことは、学園としては由々しくはない」

「先生としては?」

「どうでもいい」

「なれば、見逃して頂きたい」

「……私の目的の邪魔になるのであれば、晒す」

「先生の授業は非常に為になる。先生の邪魔になることは絶対にしないと約束する」

「……もしかして星狙いか?」

「見逃して頂きたい」

ここでもう星だと言うことも可能だろうが、そこまで信用するには物足りない。

「調べるぞ」

「見逃して頂きたい」

「もしこの先使える手だと思ったら、使うからな」

「……なぜ、そこまで満星を?」

「言ったら教える」

「もし言われたら、学園を去ります」

「モーレイの令嬢が簡単に去ることは出来ないだろう。弟たちもいるのだからな」

「……一言言えるのは。晒され、人目につくと邪魔だからです」

弟たちを残して一年先に卒業することも心苦しいところなのに、それを言われては白状するしかない。

「誰の?」

「めんどうな人達」

「?」

「貴族の婚約者探しに関わったことは?」

はてな顔が途端、残念そうな顔になる。

「あー、貴族の!あれから逃げるためにこんなことを?」

「最重要事項です」

「そんなに?」

「一学年の社交授業を見ると意味が分かると思いますので、見学することを望みます」

ちょっと強めの剣幕で言ってみたら、ふーんと顎を一撫でして、分かった見てくると席を立った。

「今日はもう社交授業はないので、明日は……二講時目に社交授業があります」

「そこまで言うなら、見てからにする」


翌日の付与魔法技能授業。

「今日の授業だが、何らかの事情で敵などを見逃す必要がある時に使える付与魔法を教えることにする」

そんな授業をしてくれた。

先生への信頼度が上がったが、星だということはまだ言うつもりはない。

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