25、髪短め女子

二学年に上がってから、ある女子を何度か見かけた。


「なぜ、何も起こらないの……」

ある時、そう独り言を言って歩いている女子を見かけた。

肩よりも少し長い位の短めな髪が気になった。

この学園は半数以上、下手すりゃ95%以上貴族で、女子は腰よりも長い髪が基本原則的。

だから髪が短い女子を自分以外では見たことなかったから、目が行った。

それにそんなことを言いながら歩いているのを、見るなという方が無理だろう。

そう思っても自分には関係ないことだから、スルーで離れた。


またいた。

今度は、我が癒しの空間、新図書室。

その短め髪の女子は、図書室に入った少し先で立ち止まっていた。

こちらが開けて入ったことも分からないだろう、微動だにせずに壁を見つめていた。

それの横を通り、目当ての本を探していると、司書さんに声をかけていて、その声が大きくて全て聞こえてきた。

「窓は?図書室に窓がないのは、どうして?」

「改装して、窓は取り払いました」

「机と椅子もあったのに」

「自習室が別に作られているので、こちらは本の貸出し……」

「こっ、こんな図書室じゃない!」

司書さんの話も途中にそう言うと、走って図書室から出ていった。

司書さんは驚いた顔をしていて、こちらに気付くと溜め息を付いて肩を竦めた。

頑張れ!


今度は、何人かの男子と廊下で話していたのを見た。

「女装した、凄く綺麗な先生っていなかった?」

「……女装って、あーあの熱血野郎のこと?もうとっくにいないよ。ほんと、アイツ暑苦しかった」

「えっ?暑苦しかった?清楚で綺麗で……」

「いやいやいや、最初だけ。すぐに女装止めて、熱血暑苦し野郎に変わって本当に最悪……」

ミミックギタイ先生最高だったのに、また戻ってこないかなぁ。

そんなことを思いながら、通り過ぎた。


今度は、中庭で何人かの女子に囲まれたその子を見た。

「どうして、あなたがそんなことを言うの?」

「何を訳の分からないことを」

「あなたじゃない、だって髪型が縦巻きロールじゃない」

「髪型?何を言っているの?」

「だって、縦巻きロールの縦巻きロールの……」

「なにこの子?おかしい……」

そこで囲んでいる一人の女子と目が合った。

その女子は、髪短め女子に何か言ってるロングストレートヘアにヒソヒソとし、ロングストレートヘアはこちらを確認した。

「っもう、いいわ。行きましょう」

そう言って取り巻きを引き連れて去っていったのは、一学年の時の隣の席の……誰かさん。

顔は覚えていたが、名前は出てこなかった。

髪短め女子に声をかけようかとしたが、見たことをバラすのもなっと思っていると、動いた。

「違う、あれもこれもどうして……」

そう言って去っていった。

イジメとかではなかったようだ。

ストレートさん誰だったか、まあいっか。


しばらくしてから、その髪短めな女子が、平民出の中途編入の子だということが分かった。

その女子は、学園一の美少女と言われているようだ。

小動物系の美少女らしい。

髪以外はよく覚えていない。

まあ、関わることはないから覚えなくてもよいやつだ。

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