24、午後は変身-師匠
薬草摘みとミドルゴブリンの魔核5個を集め終わった。
次は、何度か訪れている老夫婦宅の薪割りやら水汲みやらの力仕事代行。
「終わった、他にあるか?」
「もう大丈夫だよ。ありがとうねぇ」
「こっちこそ」
老夫婦のお手伝いさんのギックリや諸事情が重なり、ギルドに手伝いの仕事を出していた。
だが、お手伝いさんが辞表を出したことで新しいお手伝いを雇うことになったと、仕事を出すのは今日までらしい。
「あんたはしっかりやってくれるから助かったよ」
「他にも来てもらったけど、やることが粗いやつは他に仕事を増やしてくれたからな、全くっ」
「師匠に、仕事きっちりって習ったから」
水汲み一つでも粗相したら、アン様っと一言飛んで来るから、しっかりやるようになった。
手伝いクエは結果だけではなく、過程も大事と。
「いい師匠に出会ったのねぇ」
「ホント、いい拾い物したよ」
「あらっ、師匠は拾ったのかい?」
「そんな感じ、あれ?拾われた?」
「拾われたにしときなさいな」
「そうだね。そうする」
その後、お茶も貰い歓談してしまい、ギルドに戻るのが遅くなりポイントホクホクでも、寮の門限にギリギリで内心ドキドキ。
なぜかと言うと。
「時間を考慮し、動いて下さい」
窓からギリギリ侵入に、寮担当とかよりも、怖い存在が睨みを効かせていた。
「はい!師匠!申し訳ありませんでした」
わざと言ってみたが、ジト目で返された。
「師匠?」
「給金を頂いている立場なので、師匠という呼び方は抵抗があります」
「気にするとこ?」
「気になります」
律儀というか、頑固なシェルに合わせて、呼び方を考えてみる。
「……あっ、だったら雇い賃ならぬ、レッスン料ってことでシェルせっ」
そこでシェルの尋常でない程の圧に、吐こうとした言葉は口を開けたままで止まった。
「それ以上、このことでふざけるのなら、今まで頂いた賃金の10倍返してでも辞めさせて貰いますが」
こくこくと頷き、両手を上げて降参ポーズ。
「っごっごめんっなさい」
「夕食は取られてないですね。用意しますので、汚れを落としてきて下さい」
「はーい」
冗談が通じることが多いのに、このことだけは禁忌らしい。
浴槽に浸かりながら、先生と呼びたかったと呟いた時に、ゾワリッと悪寒が走り、鼻まで浸かった。
湯の温度も上げながら、ブクブクと悪寒が収まるのを待ち、そーっと顔を出す。
まじで禁忌なのだと再確認して、この話を忘れることにした。
師匠や○○というのが嫌でも、冒険者としての師は?と問われれば、シェルの名を出すだろう。
ふっと、出会った時のことを思い出した。
「やはり、拾われたよりも拾った方だろうな。うん、いい拾い物した!だがぁー、捨てられて困るのは私の方だから、拾われたも適切。……捨てられないようにしないとな」
魔法でお湯を持ち上げ、頭からバシャッとかけてから、気分を切り替えた。
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