17、木刀の〜

ガッ……

カンッ……

ザッ……


木刀の 音が響くよ 夏の空


最後の句を『庭の隅』でもいいなかも、と習った事もない適当に俳句に自画自賛。

休みだからと気を抜いては身体が鈍ると、簡易ドレスから稽古着へと着替えて、朝稽古でシェルとのカンカン中である。

「まだ移動での鈍りが残ってますね」

「クッション効いてても、あれはキツイわー」

「もう数年すれば、エア椅子での馬車移動も可能になりますよ」

「いやっ、それは絵面がゴリになるから遠慮しとく」

「ゴリ?」

「そんなんを電車でやってるのを漫画で見たことある」

「あちらの話でしたか……まだやりますか?来ますよ」

そりゃあ、こんなカンカンしてたら見に来るだろう。

でも、それも想定済み。

「遊びじゃないとこ見せないと、いくら肯定しても姿勢を見せないと伝わらないものもあるし」

「なら続けましょう」

シェルの稽古のおかげもあり、魔法で隠されていたかのような令嬢らしからぬ身体能力はメキメキ開花され、中級騎士よりも剣が立つようになった。


怪我したら 治して続ける 治癒剣士


字余り。

そう治癒が使えるから、怪我も肉体疲労も何のその、気が済むまで続けることが出来るのだ。

ついでにシェルも疲労軽減すれば、もう二石無限鳥。

肉体改造する気はないが、腹は縦線が入ってしまった。

ムキムキはある程度ならいいが、適度は見極めないとと少し自重することにした。


観に来ているのは弟二人。

しばらく遠目で観察していたが、二人とも走ってどこかへ行き、両親を連れてきた。

しばらくして、また双子がどこかに行き、今度は祖父母四人を連れてきた。

すぐに双子がいなくなり、すぐに戻ってくると、今度は使用人が何人も何か荷物を運んできた。

すると、そこに出来上がる見学&朝食会場。

「サーカス?闘技場?これはどちらの気分でいればいい?」

「どちらも見世物なので同じかと」

「そう。適当なところで終わろうか」

いつもよりも早めのカンッの音で終わらせた。

さっと、全身を水で包み洗浄し、汚れや汗は地中にぽいっと捨て、服等の水分と肌適量水分量のギリギリまで水を抜いて全身乾燥。

適当に合わせたオールインワンで肌ケアも怠らない。

これを忘れるとシェルにジト目される。  

自分のが終わるとシェルも洗浄、乾燥。

こういう時は、タオルドライもドライヤーもいらずでいいが、水属性のせいか風呂好きでもあるから、きちんと風呂は毎朝夕入ってる。

それができるのもお貴族様らしいが、そこは甘んじておく。

二人の弟が少し動揺した顔で聞いて近付いてきた。

「「今の何?」」

「簡易洗浄、保湿付き」

「高度魔法の組合せを簡易扱いは流石だよね」

「ねぇちゃま、それ教えて」

「水属性が二人は弱いから違う方法を探しましょう」

家族の待つ朝食会場に二人に挟まれながら進む。

「みんな、おはよう」

「「「「おはよう」」」」


おはように 乗せて返るよ 幸せが


俳句のいい悪いは分からないが、今日もいい朝なのは知ってる。

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