16、姉弟

アンには、弟がいる。

一歳になる数か月前、一歳の誕生日にプレゼントに何が欲しいと言われ、しばらく悩んでからこう言った。

「「おちぉーちぉ、かぁ、いみょーちぉ」」

そう被りで言うのは、姉に所望されて産まれてた双子の弟達である。

ちなみに『いぃーおー』の話もこの二人が掻い摘んで話していた内容をもう少し詳しくしたやつ。

モーレイ家の歴史として記録されているものの上に、使用人などの話もありの着色付きとか、史実だとかなんとか。

一歳にも満たない赤ん坊が色々とやらかしたのだろうが、それをアン自身の記憶として鮮明に残すのは無理だろう。

少しは残ってるが、あのような全体的な流れとして覚えてはいない。

「「そして産まれた俺ら二人は、もう生まれる前からネェの、な訳!なのに手紙一つなし?俺らは何回も送ったよね!」」

この二人、怒りモードだと被る。

二卵性双生児で外見も違うし、普段は静と動、色で例えると青と赤なのに怒るとこれだ。

昨日の宴会では、抑えていたが今日になって朝の粗方の支度を終えた時突撃され、『いぃーおー』の後にこれである。


「……それは私に謝罪しろと?」

そう切り出すとすぐさま勢いも消え、少しモジモジしだした二人。

「そっこ、までのじゃないけど……」

「うっ、いや、あの……」

それにクスリと笑み、私が座っているソファーの両脇を両手でポンポンと叩くと、座れの合図と気付き、すばやく座った。

そして、私は両手で二人の手を握った。

「私が筆不精なの知ってるでしょ、でも次は書くわ。あらっ、また大きくなったの。そろそろ越されるかしら」

「「絶対だよ!待ってるからね!越すよ!身長だけでも勝たないと俺ら、一生どうやっても勝てないもん」」

「そう?何かしらは勝つわよ。楽しみにしてるわ。まあ、もう何処に出しても恥ずかしくないし、自慢できる素晴らしい弟たちだけどね。さて、行きましょう、今日の朝食は何かしらね……」

シスコンな双子に、ブラコンな姉である。

仲良く朝食に向かいながら、やはり姉弟はいいっと改めて思った。


前世の私は常に一人で、兄弟姉妹の周りが少し羨ましかった。

オンリー好きで、ゲーム内で誰かと一緒は嫌だが、兄弟姉妹はいいなっと。

だから、ゲーム内のセカンドキャラやペット等は、自分の中では妹だったり兄だったりと兄弟設定にしていた。

経験として兄弟がいないから、どんなものがは分からないから、会話もないキャラのそれは、ただのキャラだが、少し内面でだけ特別だった。

その記憶がなくても兄弟をと欲したのは、前世の何かが関係しているのかもと今なら思う。

ケンカなどあったりもしたが、お互いに落ち着いた昨今、こうして何の垣根もなく慕ってくれてる存在というのは嬉しいものだ。


そういえば、この二人も結構なイケメンらしい。

うーん、この二人は可愛い、どこを捏ねくり回しても可愛いとは思うが、それがイケメンかと言われたら、よく分からない。

そう言えば、可愛さが少し鳴りを潜め、精悍さが多少は出て来ているかもしれない。

それがイケメンの定義?

うーん、イケメンの基準は何だろうか。

あれ?そう言えば可愛いもイケメンではなかっただろうか?

イケメン特集とかにカワイイ系イケメンとかあったような。

なら、二人は確実にイケメンだ!

となると、赤ん坊や幼児は全てイケメンとなってしまう。

……イケてるとは……何だろうか。

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