13、縛り

日本人として生きてきたからもあるだろう。

最初の方は、魔物を倒すことの忌避感は感じたが、それも数こなせばなんとやらで、すぐに慣れた。


こちらの魔物はドロップ制、絶滅したらボワッと煙になりドロップと共にいなくなる。

ドロップの大抵は、あれらの原動力の魔核。

大きさの大小や色で買取価格に差が出てしまう。

それとレアドロップとして、魔眼。

こちらの魔物は、水晶体が星形。

結構綺麗で、初めて魔眼を拾った時など、手放したくないような心地になった。

実際に好事家の収集アイテムとなっている。


それにアイテムバッグもある。

簡易鑑定インベントリ機能付きで、入れた物の名前も分かる。

だから、ほとんどの物は調べたい物があれば、バックに入れてしまえば、鑑定家に持ち込まなくても分かる。

そこで不明と出たら鑑定家に持っていく。

だから、最初の薬草摘みは、それっぽいのをバックに入れてあっていたら、それを摘む。

違うのが混ざってしまっても、インベントリが分けてくれる。

アイテムバックは、容量やデザインで価格がピンキリ。

金持ち令嬢のポケットマネーを使えば、それなりのを買えるが、そこはあえて使っていない。

前世のゲーム時、あえて何かをしない、と自分に課す縛りをよくしていた。

レベル10までは、このエリアを越えないとか。

レベル○○は、この魔物だけとか。

特に序盤で何かを買う時は、持ち金が購入金額✕2にならないと買わないとか。

幼い頃ゲーム内で、高い武器を買い有り金を失い、宿も泊まれなくなったことが縛りを始めたキッカケ。


そして、このリアルファンタジーでもあえて縛る。

モーレイの金は最初の初期投資費用、初期装備以降使っていない。

冒険者としての身の丈を越えない。

レベル低いのに、高額装備では追い剥ぎの餌。

冒険者は、土日祝日や半休の時のみ。

学業もおろそかしない。

今のところ、こんな感じの軽い縛り。


今までのアンの実績を下げる訳にはいかない。

となると、レベル上げもじっくり出来ないもどかしさはあるが、仕方がない、じっくり確実にこなしていくしかない。

そうそう、この世界の冒険者は、レベル表記じゃない。

レベル上げと言っても、星の数を増やすために依頼書こなす。

依頼書一つ一つにポイントがあり、それを冒険者に蓄積するらしい。

蓄積ポイントは目に見えないが、あの星カードに貯まる仕組み。


約3ヶ月冒険者として過ごし、まだ2星。

早く夏休みになってくれと地団駄踏みながら、明後日から夏休み!

家には帰らずに冒険者として過ごしまくるぞ!

「伯爵様より、帰宅の指示があります」

「えーっ、その縛りあるのぉーーーっ」

シェルが防音を施していなかったら、寮にアンの叫び声が響き渡っていたことだろう。

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