07、はて?

シェルにサクッと断髪もらった翌々日。

チラチラと視線を感じつつ、大人し目なザワザワがある程度で、何事もなく入学式を終えた。

クラスへ移動の為に廊下を歩いていると、上級生がこちらを覗いていた。

ザワザワと見世物にでもなった気分で歩き、クラスへと着く。

割り振られた番号を見ると一番後ろの廊下から二番目の席。

席に着き、黒板を見るとクラスの半数の視線が窓際へと向いていた。

つられて見てみると、窓際後ろのトライアングルゾーンの黄金位置を陣取る三人の男子の姿。

友人同士なのだろう、仲良さそうに話している。

各地から入学する学園で、知り合いがいるのはいいことだ。

アンの知り合いはいるにはいるが、知ってるいるくらいで、ああも笑い合って話すような友人関係はいない。

しかも前世は、知り合い止まり、友人と呼ぶようなものはいなかった。

友人とつるむよりも、家でゲームしていたい方。

この世界にゲームないっと嘆くつもりはない。

リアルRPGにいるのだから、この教科書一つ取っても、そこに書かれているのは魔法や魔物とワクワクの宝庫だ。

教科書を開いてウキウキしていると、トントンと机を叩かれた。

見ると、廊下側の席の女子。

「私、クレーフト国のルアーデ バースツリーよ。よろしく頼むわ」

「メーアグラッセ王国、アンダーツゥ・モーレイ」

名乗ると、バースツリー嬢からさっと血の気が引くのが分かった。

「あっ貴方様が……失礼致しました。よろしくお願いいたします」

いきなり口調と態度が改まるのは、周辺諸国にもモーレイ家の名は際立ってるからである。

その一端に、この世界で唯一全諸国から、罪人引き渡し条約を締結させたのは母親だという事実。

ややでも悪人、罪人は、モーレイ家に近付くなかれである。

「貴方の家が不正などしてないのであれば、改める必要はないわ。今は単なる同級生なのだから」

「あっ、はい……」

ふっと周りの空気が変わったので、チラリと見ると、一斉に皆視線を外らせた。

それに気付かなかったフリをして、教科書に目を戻した。

魔法のある程度は既に取得しているが、前世の記憶が戻ってからでは、文字で見るとまた違うのだ。

アンが、目をそらしたのを幸いとまた皆の目線は窓際のトライアングルゾーンへ、そして聞こえる称賛の声。

「アルフォンシーノ皇太子殿下が素敵過ぎて目が……」

「スクイッド様も男らしくて……」

「スカロップ様……お美しい……」

「スクイッド様はカラマーリ宰相の次男で……」

「スカロップ様はペッティーネ大公の長男で……」

「お三方は生まれも数日違いで……」

「隣のクラスの双子のオマーロ様とアマール様はクレーフト国皇太子であられて、お二方共また…………」


あの三人はイケメンで、隣のクラスもイケメン双子がいるらしい。

ちらりとまたトライアングルゾーンを見て、視線を戻した。

あれがイケメン、そっか、あれらはイケメン部類なんだな。

パーツかいい感じに揃っていればイケメン?

そもそもイケてるメンズって、何がイケてんだ?

うーん、前世の時からイケメン定義が不可解だ。

はて、イケメンとは?

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