第99話 覚悟
「御影さんは、複雑な家系だったですの。妖怪省のトップ、山名大全さんの妹として生まれましたが、大全さんや家族はなかなか御影さんにかかわれず、側近だった勝親さんと一緒に行動してましたの。いつも戦いを教わったり、一緒に戦ったりして御影さんは彼をお兄さんとして慕っておりますの」
「そ、そうだったんだ」
複雑な家族関係だな。いつも明るい感じだったのに意外だ。
御影さんを見ていると、2人のやり取りに見かねたのか声をかける。
「お兄様、私が見ておくから連れてってあげましょう」
「御影がそういうなら──ってこの前の半妖、お前──俺に首を差し出しに来たのか??」
いきなり私に敵意を見せてきた。この人、御影さんなら大丈夫なのに私を疑っているんだ。
手をあわあわと降って、何とか言葉を返す。
「違います。人を殺したりなんてしないですよ。協力ですよ、それと、勝親さんに私が人を食らう妖怪出ないと、証明してもらうために木間氏ts」
「巣立ったな、お前は俺が見極める。凛音が、本当に俺たちと同じ仲間なのか──それとも妖怪なのか、もっとも本当に妖怪だった場合はその場で原型もとどめないくらいボロボロにしてやるからな」
「わかりました」
「もう、大丈夫よ。私が一度一緒に仕事して保証してるから」
苦笑いしながらいう御影さん。大丈夫かな……。ここまで疑われると、心配になってしまう。でも、御影さんがそう言って肩に手を置いてくれると、どこか肩の荷が下りた感覚になる。大丈夫、普段通りに戦えばいいだけ。問題はない。そんなやり取りをしていると、ミトラが子供の前で体育すわりをして目線を合わせて話かけた。
「どうしたんですの?」
女の子は、首を傾けた後ミトラを信用したのか事のいきさつを話し始める。
この子によると、一つ上のお兄ちゃんがさらわれたのを見た。そっと後をつけていたらここに紛れ込んでいたらしい。
「髪が長くて、目が見えない男の人。お兄ちゃんを取り返したくて来たの」
その言葉に、ミトラは優しい笑顔を浮かべて、女の子の頭を優しくなでながら言った。
「えらいですの、でも危ないですの」
「でも行く」
両手を強く握って、女の子は言葉を返す。それから、勝親が話始めた。
「子供ばかりを狙った妖怪が出てきていると聞いた。そして、何とかこの世界にたどり着いた。今までも何匹か妖怪を倒している。気配もするしこの辺りにいるのだろう」
話によると、子供は突然後ろから顔に紙袋をかぶされ、そのまま拉致されるらしい。
そして、追手の後をこっそりとつけていったらここにたどり着いたという。
「お兄ちゃんを助けたい──何もできないなんて嫌!」
たぶん、それだけ止めようとしてもこの子は止めないだろう。かえって隠れて一人で行動して、危ない目に合うかもしれない。それなら、目の届く範囲で気を付けながら一緒に行動した方がいいとおもったからだ。
「しょうがないわね。ついてきてもいいけど、責任はとれないわ、後ちゃんと私たちの誰かのそばにいるのよ。いいわね」
「わかった」
「じゃあ、本番行くわね」
そして、私たちはさらに道を進んでいく。一応、変身しておいた。いつ戦いが始まるかわからないから──。御影さんも、青を基調とした、振袖みたいな花柄の和服。でも下はホットパンツみたいに太ももがほとんど丸出しになっている。真っ白で、スレンダーな太もも。きれいで、視界に入るとドキッとしてしまうけど恥ずかしくないのかな?
銀色のパイプや、大きな装置がある部屋を通り過ぎると、窓越しに機械ラインが見える通路となる。銀色の平たい機械──が流れていて、別の機械によって電子盤やコードが取り付けされている。人は誰もいない。
誰か、整備している人とかいないのかな? そんな風に考えていると、御影さんがこっちを振り向いて話かけてきた。
「本来別の業務だったのに、忙しくてこっちに駆り出されたのよ」
「そうなんですか?」
「最近多いのよね、半妖の人と戦う割合が。何かあったのかなって調べてたらね……こっちも手伝ってって」
それからは、日常的なことを話したり、聞かれたり。私は噛みながらなんとか答えてたけど、これは気を使ってるってことなのかな? ミトラとかなり意気投合している様子。確かに、2人とも明るくて気が合いそう。
そんな風に話していると、勝親が御影さんに近づく。
「気配がする。ついて来い」
そして速足で前を行ってしまった。一気に雰囲気がピリッとして、緊張感が高まる。
御影さんに、ひそひそと話しかけた。
「勝親さん、気配わかるんですか?」
「そうよ。私だってやっとほんのりとわかるくらいなのに、すごいわね。だから管領の地位にいるんだけどね」
管領──妖怪省でも、上の方にいる地位だっけ。貞明さんや、登美子さんと同じ。
単純な強さだけでなく、そういった能力まで高いのか……でも擬態したり逃げ足が速そうな敵相手に活躍しそうだ。
ようやく私の鼻も異臭がし始めた。不快さを感じるかのような、魚が腐ったような生臭いにおい。
私達はクンクンと匂いを嗅ぎながら広大な工場の中を、早歩きで前へ。右へ、左へと進んでいく。
見つけたぞ──永遠とづつく薄汚れた廊下のような場所。その直線の先に、姿はあった。
「待て!」
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