第73話 急変
集落がそこまで迫ったあたりから、なにやら異様な気配を感じ始める。
本能から発せられる、不気味な──何か得体のしれない力のような気配が全身を包んでいるような感覚。
何なのだろうか──。
そして、集落へと到着。到着するなり、家屋の方から奇声が聞こえ始める。
びゃびゃうびゃうびゃうびゃ~~。
びぎゃァァァァァァァァァァァァァッッッッ──!!!!
こんな感じの奇声。前にもあった。ミトラと一回顔を合わせてコクリと頷く。
「行きますわ。準備を──」
「わかった」
妖怪が襲っているんだって、1発でわかった。
恥ずかしいけど、人々を救うには仕方がない。大きく深呼吸をして、半妖へと変身。
やっぱり恥ずかしい……。
今度から、もう一枚羽織ろうかな??
そして、叫び声が出る場所へ。
駆け足で逃げ惑う人々に逆走するように集落の中心を駆け抜けた後、たどり着いたのは集落のはずれ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
叫び声が聞こえた後、村の老人たちが四方八方へと逃げ回る。
半壊した建物。外にある田んぼには、隕石が衝突したような跡が出来ている。
そして、建物の中に壊れた壁から入った。入ってすぐに、悲鳴の正体を理解。
醜い外見をした、2メートルくらいの化け物。
家屋の柱にしがみついているように存在している、馬の首の姿。見たことがない、醜い化け物。
ミトラが、警戒した目つきで言う。
「あれは──『さがり』ですわ」
「強いの?」
「そこまででは、ないですの」
「とりあえず、そんな強くないけん、分かれて戦うわい。わしは外を片付けるから、2人は家の中のさがりを」
そう言って、貞明さんは外で暴れているさがりに向かって行った。10匹近くいるけど、大丈夫なのだろうか。
「貞明さんなら、きっと大丈夫ですわ。私たちは、家の中のさがりを」
そうだ、人を襲ってる以上、早く退治しないと──。
さがりはこっちを向くなり、視線が合って、まるで猪のように突っ込んでくる。
私は、すぐに下がりに向かって突っ込んでいく。
殴り掛かってくるさがり。そこまで早くはないし、大赤見の時のように知能を持っているわけでもなさそう。
攻撃を読み切って右にかわして、みぞおちにカウンターをたたき込む。
妖扇で腹を殴った瞬間、身体からありったけの妖力を妖扇に込める。そこからさがりの肉体は徐々に凍り付く。
数秒もして、完全に凍り付いた妖怪。カチンコチンに固まって、全く動かない。
そして消滅していく肉体。それを見て一安心。何とか被害を出さずに勝つことが出来た。
そしてミトラ──。
「いきますわ!」
そう叫んで、自身の槍をさがりに向けて突っ込んでいく。さがりは3体ほど。殴り掛かってくる下がり。ミトラは、さがりの攻撃をよけようともしない。
真正面から槍で受け止める。
「ちょこざいですわ」
そして大きく息を吸う。
風の妖術──
その姿は、ミトラのきれいなスタイルと相まって、しなやかでとっても素敵に見えた。思わず、じっと見入ってしまう。
「これで、おしまいですわ!」
ミトラの攻撃。薙ぎ払って、一撃で2匹の妖怪を粉砕。蒸発するように、妖怪は消滅。
そして、背後から襲ってきた最後のさがり。大きく心臓のあたりを突き刺すと、そのまま力任せにさがりを下にたたきつける。
さがりの身体はミトラの槍から発せられる風によってミキサーにかけられたように粉砕。ピクリとも動かなくなった。
そういえばミトラの戦っている姿、あんまり見たことなかったな。しなやかで、可憐というイメージがとっても焼き付く。
とっても凛々しくて、可愛い。ついついみとれてしまう。そして、こっちを向いてウィンクをした。
そして、貞明さん。さがりを10匹近く相手にしていた。いくら貞明さんでも、大丈夫かな?
少しだけ視線を向けて、杞憂だったのがわかる。
さがりはもう残り2体。
貞明さんも、瞬殺といった感じで襲い掛かってきた妖怪たちを退治してく。貞明さんは、銃を使うらしい。
黒い、火縄銃みたいな銃から、マシンガンのように片手で弾を連射して攻撃している。
数秒で戦闘は終わり、手をパンパンと叩いて余裕そうな表情。
「中の下って感じだね。まあまあ」
すぐに、妖怪たちを退治し終わった。気味の悪い奇声を上げながら、蒸発するように妖怪たちは消滅していく。
「何とか、無事でしたわ」
おじいさんが1人けがを負っただけで他に被害はないようだ。建物は、半壊くらいはしてるけど。
村のおばあさんが、包帯を持ってきて応急処置をする。
「これで、大丈夫じゃ」
周囲では、他の怪我をした人たちに応急処置をしていたり、半壊した建物をじっと見ていたりしていた。
「しっかしいきなり妖怪の襲撃とは──こりゃあにかあるのう」
すると、村の老人の一人が、怯えた表情で言う。
「これ──弥津一の呪いなんじゃろうか──」
や、
怯えた老人を、思いっきり殴る。
「それは言うな! 禁句じゃ!」
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