第51話 絶対に、取り返す
そうだ、私にはいるんだ。取り返さなきゃいけない人が──。
家族の姿が脳裏に浮かんだ。
父さん、母さん、静香。そうだ、みんなの無念は──私が取り返さなきゃいけない。
怒り、なのだろうか。強い思いなのだろうか。よくわからないけれど、自然と力がわいた。全身に妖力を込めて身体を回復させる。
そして、再びを見つめた。
こいつ──人の心に土足で踏み込んできやがって……。
大赤見への、怒りが頂点に達した。
「お前だけは──絶対に許さない!」
そして、一気に大赤見へと向かっていく。
「ほう、許さない──お前を倒す。せやけどな……」
結果は、一瞬だった。私が前がかりになったところに、カウンターをみぞおちにくらう。
「お前に何ができる。ワイには、何でもある、強い力。技術──そして、貴様を殺す覚悟──」
大鎌の刃先が、私の腹や贓物を貫く。あまりの痛みに、気を失いそうになる。
懸命に耐えて、何とか意識を保つがさらに大赤見は攻撃を仕掛けてくる。
「じゃが貴様には何もない。力任せの戦い──駆け引きは初心者。凝り固まった考えだけ」
痛みで動けない私のお腹を蹴っ飛ばし、再び突き飛ばされてしまった。
倒れ込む私、何とか見上げると、大赤見が余裕そうな表情でこっちを見ていた。
トントンと鎌で肩をたたいている。
「まるで猪や──戦いに気持ちがこもっているのはわかるが、それだけ──」
感情だけ。確か、以前こんなことを言われたことがある。
走馬灯なのだろうか──琴美といた時のその時のことが頭をよぎる。
琴美に以前指摘された、私の悪いくせ。
私が中学生だったころ──。
昼休み直後──1人でトイレに行こうとして入り口前まで足を運んだ時──。
「あんた──卓也君狙ってたのに。どうしてくれるのよ」
怒りがこもったような、怒鳴り声が聞こえる。
思わず、足がすくんでしまい顔を少し入り口から出して中で起こっている様子を確認した。
中では、リボンをつけていて目つきが悪そうな同級生がトイレで琴美を問い詰めていた。
鏡のある、洗面台の前に琴美は立っていた。
恐怖を感じているのだろう。体を震わせ怯えている。
私は、どう対応すればいいかわからすただ物陰から琴美と相対している同級生を見ていた。
「別に、狙ってなんかないよ。困っていたから助けてあげたら、告白されちゃって」
「たぶらかしたんじゃないの? 痩せてるのに、こんな大きいおっぱいして」
その言葉に、琴美は胸を押さえて一歩引く。リボンの女は、けげんな表情で琴美に寄ってくる。
「たぶらかしてなんかないって、本当に、困っていたから話しかけただけ」
「うそつけ! たぶらかしてるんでしょ! その細い体のくせ大きいおっぱいで! 彼、せっかく、狙ってたのに──『ごめん、僕は琴美ちゃんがすきで』って」
「この、泥棒猫!」
同調する小太りの同級生。
小太りが、ドンと琴美の胸のあたりをどついて突き飛ばす。琴美は、後ろに吹き飛ばされ壁に寄っかかっていた。
怖がっていて、目が怯えているのが私にもわかる。
その光景に、私は我慢でいなくなった。
「何やってんだよ」
日頃コミュ障でほとんどしゃべらない私。
勇気を出して、今までにないくらい大きな声で怒鳴って彼女たちに近づいていく。
「凛音──」
「何よ!」
「何よじゃない。なんで突き飛ばすんだよ!」
隣の眼鏡をかけたやつが言った。
「うるっさいわね。あんたには関係ないでしょ!」
「なくない。関係なんか。私の──大切な人だ」
コミュ障の私らしく、かんでしまったが関係ない。自分の爆発しそうな感情を精一杯ぶつける。
小太りの女が、私の胸を突き飛ばしてきた。恐怖で体が震えてしまうが、そんなことはどうでもいい。
「何よ、いつも根暗で、いるかいないかわかんないようなやつのくせに」
「そんなこと、関係ないだろ!」
すると、リボンの女が私の胸に手を伸ばして、わしつかみしてくる。
「何このおっぱい」
「関係ないだろ」
この時点でサイズはD。中学生にしてはひときわ目立つサイズ。
不本意だが、学年で1番大きい。正直、男子多はもちろん女子からもじろじろ見られて恥ずかしい。
特に走るときなんか、すごい揺れるし。
「もう牛みたい。学年で一番大きいでしょ?」
「でかおっぱい。なにこれ? 男と遊びまくってそう」
こいつら……言わせておけば。
「琴美もね。スレンダーなのに、何よそれ。一体どれだけの男をたぶらかして、寝たのかしらね」
その言葉に、カチンときた。
私のことはいい。どうせ陰キャだし、ぼっちだし。でも、大切の親友が傷ついている姿を見て、放ってはおけない。
「いい加減にしろ!!」
思いっきり、女の顔をぶん殴る。
女が吹き飛んで、向かい側の壁に激突。取り巻き達は、突然の出来事に大きく目を開けてフリーズしてしまっている。
そしてリボンの女。殴られた頬を押さえながら、こっちをにらみつけてきた。
自分で琴美をいじめの標的しておいて、被害者ですってか。
「ふん! お前たちなんか、みんなでハブにしてやる!」
「勝手に言ってろ! もともとハブなんだ私は」
そう言って、3人はこの場を去って言った。
すぐに、座り込んでいる琴美に駆け寄っていく。
「大丈夫?」
☆ ☆ ☆
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