第42話 癒し、そして異変
大きな胸が、当たってる。
「一緒に、戦いますの。これからも──」
そして、私の頭を優しくなでてきた。まるで、髪を梳きほぐすかのように。髪を梳きほぐされるだけで、心がとても落ち着いてくる。安心して、不安だったり──心配だなって思っていたものが、まるで川を流れるような水のように私から流れ出ていくような感覚になる。大きく息を吐いて、ミトラによっかかった。
凄い、精神が安らいだ。私も、お返しをするようにミトラの髪をなでる。
「よろしくね、こっちこそ」
そして、体をくっつけ合いしばしの時を過ごす。
「ふぁ~あとても眠いですわ」
ミトラが、軽くあくびをする。時間は──10時過ぎ。
まだ寝る時間ではないとはいえ、戦いとかもあって疲れているのだろう。
そこまで遅くはないが、やはり戦いのせいで疲れがたまっているのだろうか。
「本当に、凛音と出会えてよかったですわ」
「こっちこそ。ちょっとうっとうしいところもあったけれど、ミトラと会えてよかった」
ミトラがいて、私はいろいろな人と出会った。
これからも、こうして2人で時間を過ごしていけたらいいな
「そろそろ、会計かもしれませんわ。ふぁ~~あ」
ミトラが、またあくびをして立ち上がる。店の中から聞こえる談笑の声も、小さくなっていった。
ミトラも眠そうだし、そろそろ宿へ戻るころかな。
私も、立ち上がって店の中へ。
がらがらと引き戸のドアを開けると──。
「えっ?」
なんというか、雰囲気が変わってきた。
さっきまで元気で話していた人たち──さっきまでのようなにぎやかさは、嘘のように静まり返っていた。
眠っていたり、おとなしかったり。
ミトラは、よろよろと元いた椅子に座ると、座った瞬間に突っ伏して眠ってしまった。
ひとみも、フラフラしていて、瞬きが多くなっている。
「あれ、疲れてるのかな……」
そして、す──っと瞼を閉じて眠ってしまった。
「ちょっと、旅館まで我慢してよ」
みんな寝ちゃって……どうしようかと周囲に目を向ける。あれ……?
みんな、眠っている。店主のおじさんはキッチンにある椅子でいびきを立てながら爆睡。
店にいる他のお客さんも、全員。みんな眠いかったのかな……」
いいや、何か異様だ。何かの罠なのかな??
突然の事態に、困惑していると──。
ふらっ……。
突然目の前がゆがんだと思った瞬間、猛烈な眠気を催してきた。
なんだか、眠くなってきた。すぐに、自分の椅子に座る。
瞼が、少しずつ重くなっていく。頭はぼーっとしてきて、フラフラしてくる。
身体に力が入らなくなり、目を開けていられない。クラクラとした中、懸命に頭を働かせる。
そこまで、疲れてたのかな?
だんだんと、眠気のせいで思考まで回らなくなってくる。
心の奥に強い違和感を感じながら、私の意識は暗闇へと沈んでいった。
満月の夜。
牛頸ダムの近くにある山。そこに生えている木から福岡市を見下ろせるような場所。星空と大都会のネオンが見える。
人々が眠り込んだ地上を見ながら、2人の人物が1匹の動物と戯れていた。
きゅぅぅぅぅぅぅ~~~~ん。
白くて、手のひらサイズの小動物を、一人の男がなでる。
「獏はすごいねぇ、まさかみんな眠らしちまう。どうだい、
「そうやねぇ──将門様」
そう言いながら、2人は地上に視線を向ける。ニヤリと、勝利を確信したような自信を持った笑み。
一人は、将門という男。
180cmの長身、細さと筋肉質さを兼ね備えた体型。緑色のツンツン頭をしている。
もう一人は赤髪で一昔前のヤンキーのようなリーゼントをした、身長150㎝くらいの
大赤見という男。まだ少年のようなあどけなさで、将門を慕っている男の子だ。二人とも、見下すような笑みを浮かべている。
「眠らせてしまえば、隊員だろうと大老だろうと怖くない。ね、大赤見」
「そうやな、どんな敵だって──自分たちの、理想とする世界にいるんやからな」
そして、大赤見の少年が立ち上がった。将門と呼んでいた男の前に立って自信満々に叫ぶ。
「将門様、私の実力──とくと見てください。私一人で、ここら辺で眠っている奴ら──送って見せますで」
「いい威勢だねぇ~~。じゃあ、今回は大赤見君にまかせちゃおっかなぁ~~」
大赤見は、喜んで頭をすっと下げた。そう、今日は半妖になりたての男大赤見輝三が、一人前の半妖として認められるかの試験のようなものなのだ。
大赤見にとっては、今まで数えきれないほどの人を殺してきた敬愛する将門に認めてもらえるか、人生大一番の時間でもある。
幼いころから、両親から虐待を受け、凄惨ないじめにあい誰からも必要とされなかった大赤見。
大雨の中、地面に這いつくばっていたところを将門に見つかり、半妖となるために力を手に入れた。
その後は、両親を──自らを虐げていたやつらを生きたまま食らい──可能な限り苦痛を伴う形で殺した。
「ありがとうございます将門様。この私、大赤見必ずやお役に立って見せます」
そんな彼を、将門は喜んだ。「こんな残虐で憎悪に満ち溢れたやつは、初めてだ」と。そして、認めてもらいたければ一人でも多くの妖怪省のやつらを殺せと提言。
大赤見は、喜んでコクリと返事をした。
そして、飛び降りるようにして木から飛び降り、意気揚々と向かって行った。
何も知らずに眠り込んで、夢の世界にいる人たちのもとへ。
「僕は、ここで見せつけるんや──みんな殺して、恐怖で人々を支配するような妖怪になったるわ。そして──将門はんに、ワイの実力を見せつけたるんや。いくで、獏──」
大赤見が、にやりと笑みを浮かべた。
☆ ☆ ☆
読んでいただいてありがとうございます
よろしければ、☆を押していただけると、とても嬉しいです。
今後の執筆のモチベーションにつながります、ぜひ応援よろしくお願いします!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます