第39話 変な音
そうだ、逃げるわけにはいかない。
逃げたら、後ろにいる何の罪もない人たちが被害を被ってしまう。
だから、戦うんだ。
「でもよ、河童がみんなの精神を操作していたのか?」
「いいえ、そんなうわさは聞いてませんわ」
「多分、河童とは別の妖怪だと思うの。河童だっていつもとは違うでしょう? 元締めみたいのがいてそいつが精神を操作していたり、河童を巨大化したいるんじゃないかしら」
「なるほどな……」
ひとみと菱川が会話する。私は、河童を見たのが初めてだから何とも言えないけれど、河童が人の精神に影響を及ぼすなんて聞いたことがない。
そういうことも、あるかもしれない。
「しっかし何よこれ。一歩間違えれば集団自殺よこれ」
「愚痴を言っても仕方ないですわ。戦わないことには、こいつはこれからも人を襲ったり、精神を操ったりしていくですの」
ミトラの言うとおりだ。違和感はあれど、戦う以外にやることはない。
「凛音、皆さん。戦いますわ。覚悟はよろしくて!」
そしてミトラの言葉を皮切りに、妖怪との戦いが始まる。
「いっけぇぇぇぇ!」
まずは、遠距離の妖術を使う人たちが続々と攻撃を放っていく。
炎に、水。雷など様々な属性の攻撃が河童に襲い掛かる。
ただ、水の攻撃が炎の攻撃を打ち消してしまったり、多人数で攻撃を仕掛けている割には生かし切れていないようにも感じる。
連携が、未熟なのだろうか。人数が多すぎて、統率が取れきっていないのだろうか。
「やっぱ寄せ集めだな」
「ですわね、でも──負けるわけにはいきませんもの」
そうだ、2人の言葉通りだ。どんなことがあっても、負けるわけにはいかない。
河童は、時折反撃してこっちの隊員たちに反撃してくる。
殴り掛かかったり、こっちに手のひらを見せてきたかと思うと手の平から光線を出してきたり──。
食らったら、ひとたまりもなさそうな攻撃。私はしっかり交わして、少しずつ河童に近づいていく。
中には、攻撃をかわし切れず被弾してしまった人もいる。腕から血を流していて、押さえていたり──。
幸い、肉片になったわけではない。後で、手当すれば何とかなりそう。味方たちもそう考えたのか誰も彼らを手当てしていない。
グォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッ──!!!!
河童は、大量ともいえる攻撃を受けて大きくうめき声をあげる。
そして──。
「なんだ、突っ込んできたぞ」
河童が、いきなり走ってこっちに突っ込んできた。攻撃を受けつつもそれを無視して──。
やけくそとも、言える行動。
しかし、隊員たちもその動きには予想できていなかったようで、周りに動揺が走る。
「マジかよ!」
「突っ込んできたぞ!」
慌てて対応しようとする隊員たち。そこには、弓矢や銃を持った人たち。
「おいおい、あいつ接近戦できんのかよ」
「ひとみ、凛音、行きますわ」
「わかった」
ミトラは槍。ひとみは長い日本刀を持って応戦していく。それだけじゃなくて、他の隊員たちも──。
私は、恥ずかしい気持ちを我慢して半妖体に変身。ちょっと恥ずかしいけど我慢だ……。
そして、みんなに負けじと突っ込んでいく。
殴り掛かってくる河童。
放たれた攻撃をかわしていき、一気に妖怪へ急接近。
氷結二旋
──暴風雪──
強力な冷気をともった吹雪のような攻撃を、河童に当てていく。河童も、口から真っ黒な光線を吐いてくる。
ぶつかり合う私と河童の攻撃。
すぐに、私の攻撃が押し始めた。
そして、私の放った冷気は河童の攻撃を氷結させてそのまま河童の方へ。
「よっしゃぁぁ!」
「いけるぞ!」
「あのエッチな子強いじゃん。後で口説いてみよ」
おい……。隊員たちの雑音をよそに、私の攻撃はまるで魚が川を遡るかのように河童の攻撃を伝って河童本体へ。
河童は私の攻撃に触れたところからみるみるうちに凍り付いていく。何とかしようともがき苦しむ河童をよそに数十秒もすると河童は完全に凍り付いて全く動かなくなった。
凍り付いた妖怪。
そこに、ミトラとひとみが一気に距離を詰めていった。
「消えろぉぉぉ!」
「チャンスを凛音が作ってくれて、逃すわけにはいきませんわ!」
ミトラの槍と、ひとみの剣が河童に直撃。
カチンコチンに凍った妖怪が、真っ二つに割れて──そのままダム湖へと沈んでいった。
沈んだ後からは、妖力の気配も何も感じない。
ざばぁぁぁんと、巨体が沈んでいく音。
勝負は、あったようだ。
その瞬間、どっと疲れが襲い掛かり座り込む。
両手を地面について、座り込んだ。
そこに、ミトラとひとみ──そして菱川がやってきた。
「あんた、中々やるじゃない。意外だったわ」
菱川が腕を組んでこっちを見る。
「ござ……ありがとう、ございます」
「その調子でこの後も頼むわよ、コスプレちゃん」
コスプレ……。まあ、変に正体を勘ぐられなくって良かった。
「もう、やっぱり凛音はすごいですの」
「……ありがとう」
ミトラがデレデレしてきて、抱き着いてくる。人前で抱きしれられるのは、やっぱり恥ずかしい。
ミトラに抱かれながら、河童に視線を向けた。
完全に凍り付いて、動かない。妖怪からも、さっきまで感じていた気配も力もない。
何とか、倒したようだ。
そんな時、異変に気付いた。
それは、凍り付いた妖怪からだった。
シュゥゥゥゥゥ~~という、まるでガスが漏れているかの音。
何なのだろうか。周囲を見渡したが、特に異常はない。
「どうしたんですの?」
「いや。音、ガス漏れみたいな」
「何にも、しないですの」
「いや、耳をすませば聞こえるでしょ? ガスが漏れてるみたいに」
ミトラは、首をかしげてきょとんとする。
「変ですの。隊員の人の音以外、何も聞こえないですわ」
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