ディベートする6人1

 ここは某都道府県某所にある彩光高校。この学校にはダントツで活動内容が不明、しかし認知度は最高の部活があった。

 それこそがこの部活動(名称不明)である。


「ちょっと、なに1人で虚空に語りかけてるのよ」


 む。


「ちょっとサラ先輩!邪魔しないでくださいよ。いま大切なプロローグをやってるんですから」


 プロローグという物語で最も大切といっても過言ではない部分を邪魔してくれやがったこのやたらちっこい先輩はサラ先輩である。


「そうよサラちゃん。ノブくんは未だに中二病を引きずって妄想を現実として考えてしまう痛い子なんだから。そんな風に突っ込んだら可哀想でしょう」


「先輩もだいぶすごいこと言いますね」


 このおっとりしたような雰囲気から、想像もできないような毒舌をぶち込んでくるのが愛花先輩。


「ノブ、大丈夫か?疲れ溜まってるんじゃないか?」


「葵、お前みたいな純粋な気遣いが一番傷つくよ…」


 心配とともにトドメを刺してくれやがったのが葵。


「はいはい、そんなどうでもいいこと話してないで本題に入るわよー」


 と、この物語のプロローグをどうでもいいことで済ましてしまったのがこの学校の生徒会長の澪先輩。


 そして静かに本を読んでいるシトラスと、主人公であるこの俺、斎藤信哉を合わせた6人がこの部活(名称不明)のメンバーである。



「で、その本題について話してもらえますか、会長」


「会長じゃなくてミオ先輩でしょ!信哉クン」


 なぜかこの人は先輩と呼ばれることに執着している。めんどくせ。


「はいはいミオ先輩。それで今日は何を?」


「よくぞ聞いてくれました。つい先日、私のトゥイッターのタイムラインにある投稿が回ってきました」


 ひ○ゆきの言い方じゃん


「それがこれです。」


と、会長が新聞記事を見せてくる。そこには1人の人が写っていて


「藤井風じゃん」


 最初に写真だけで理解したのはサラ先輩で、先輩の声を聞いてようやく誰か理解したのが俺。説明してあー!となったのが葵。シトラスと愛花先輩は全く理解していないようだ。


「曲に聞き覚えがある気がするけど、この人がうたってるんだねー」


「私もそのレベルまでしか知りません」


と、愛花先輩とシトラス。


「私も全然知らないな。顔くらいは見たことあるけど、よく聞くとかファンじゃないしなあ」


「葵に同じくです」


 と葵と俺。


 サラ先輩は


「私は、何回か友達にコンサートに連れてかれたから知ってる」


 つまり詳しいのはサラ先輩と会長だけか。


「てことは詳しいのはサラちゃんとミオちゃんだけってことね」


 思ったことを愛花先輩が口にしてくれた。


「私も詳しくないわよ?」


え?


「いやいや、会長さんが持ってきた話なんだから会長は詳しいんじゃないのか?」


よく言った葵。


「いいえ、言ったじゃない、タイムラインにたまたま回ってきたって。私が気になったのはニュースの内容よ」


内容?と思い全員揃ってよく記事を見ると見出しには藤井風、差別用語を使うと書かれている。


「わかった?私は藤井風の話をしにきたんじゃなくてディベートの題材として丁度いいんじゃないかと思って持ってきたのよ」


ふんふん


「つまりこういうことですか?差別用語を意図せず使用した場合に、罪として問われるべきか問われないべきかでわかれてディベートするのが今日の活動内容だと」


「そうよ!」


 異論は誰からも出なかったので、とりあえず一度ディベートしてみることに決まった。


 ディベートは、異なる意見を持ったいくつかのチームに分かれて議論をし、その勝敗を競うゲームである。ゲームである以上当然チームはランダムだし、意見も常に自分が正しいと考える側とは限らない。相手の立場や自分の立場になって考える必要があり、論理的思考力と表現力が試されるのである。



「審判とチームはどうするんですか?」


「審判2人とそれぞれのチーム2人ずつでチームと審判は毎回チェンジするわ」


 なるほど。


 ということで第一回戦。

 審判は俺と葵。

 シトラスと愛花先輩のチームA対会長とサラ先輩のチームBである。


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