第3話


「いい加減にしてください、ギルド長。あなたがコーレをギルドから追い出したんですよ」

「まさか、断るとは思わなかった」

「だったら貴様が男娼となり、兵士たちに股を開いてろ! コーレに命じても断らねえと思ったのなら、貴様もギルド長としてその身を差し出すように本部から命じられても断らねえよなあ」


職人のひとりがバッフェンの胸ぐらを掴んでそう脅すと誰もが首肯する。

自分に味方はいない。

そのことにようやく気づいたようだ。

床に叩きつけられて「頼む、助けてくれ」と無様に泣きながら私に四つん這いになって近寄ってくる、ゾンビ一歩手前の生者。

それを遮るように職人や技師たち、そして事務長が私を守るように間に立つ。


「バッフェン。あなたが犯した3つのギルド規約違反によりギルド長を解任し、その身を拘束します」


事務長の言葉に、それまで縋るように私をみていたバッフェンの瞳から光が失われた。

事務長が拘束の腕輪をバッフェンの手首にはめたからだ。

それは逃走や自死を防止するもの。

そして……仲間が口封じするのを防ぐ効果もある。


これから彼は魔導具師ギルド本部で裁判を受ける。

本人の許しも承諾もなく、勝手に身柄を他国の者に差し出そうとしたこと。

断った技師わたしに非がないにも関わらず、ギルドからの追放処分にした行為。

さらに町からの追放という、ギルド長には許されていない越権行為。


それらが有罪だと認められれば、バッフェンは魔導具師ではいられない。

最悪な判決を受けた場合、試作の魔導具や試薬などの被験者という実験体として本部で飼われることになる。

生存率はかなり低く1年生きられればいい方で、2年以上生きられたのは10人に満たず。

3年目を半年も生きられた人の記録は……皆無である。


事実上の死刑だ。

そんな暗い未来から逃げ出すことを許す気は、ここにいる誰もがなかった。

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