第2話
慌てたのはギルドに来ていた
「バッフェン! どういうことだ!」
「コーレに何を命じたというのです!」
ギルド長室に雪崩れ込んでくる人々にバッフェンは窓際へと追い詰められる。
「まっ、待ってくれ……。俺は『腕のいい魔導具師を貸してほしい』と言われて……賭けに勝ったら一番の腕利きを貸してやると。コーレが一番だと思ったから……」
「それはいつからいつまでです!」
「あ……えっと……い、今から」
「いつまで!」
「ここに滞在している……間」
「それをコーレが了承したのですか?」
バッフェンはこれ以上、何もいえなくなった。
当然だろう、私は断ったのだから。
救いを求めるように私に視線を向けてくる。
この場で私が了承するといえば許されると思っているのだろう。
「了承も何も。娼婦になることを拒否したらこのギルドから追い出し、この町にも住めなくしてやる。と脅された」
私の言葉に周囲の殺気が何ランクもアップした。
何度も「違う! 娼婦ではない!」と繰り返すバッフェンの言葉を誰が信じるだろうか。
「もちろん私は追放処分を選択しました」
「待ってくれ!」
「これまでお世話になりました」
「待て!」
「準備が済み次第、この町から出て行きます」
私の言葉にバッフェンが頽れて力なく俯いた。
私の意志が強い、というのではない。
バッフェンがギルド長という立場で私に2つの選択肢を提示し、私は選択肢のひとつを選んだにすぎないと思い知ったからだ。
バッフェンが自らの立場を軽視した結果である。
「女性の、技師を……そう、約束……した」
「私には関係ありません」
「金なら払う。だから」
「だから、私に娼婦になってこい?」
「ちがう……技術者だ。だから」
どうしても私に行かせたいらしい。
しかし、それを止める声が上がった。
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