4. リア充遊戯?
「もう一歩も動けないですぅ」
「はぁはぁ、私もよ……」
「あははは、きっついね~」
ビーチフラッグス、ビーチバレー、ビーチサッカー、ビーチ鬼ごっこなど、ひたすら勝負を続けてリア充のごとく遊びまくった。
その結果、まだ午前中だというのに三人ともヘロヘロだ。
流石に俺も結構疲れて来たな。
「お昼の準備をするから休んでな。ああ、そこだと陽射しが強いからパラソルの下に移動しておいた方が良いぞ」
「連れてってくださいですぅ」
「はっ」
そのまま這いつくばって移動するが良い。
「そろそろ来る時間だと思うんだが……」
「誰が?」
「あれ、禅優寺は休まなくて良いのか?」
「うん、手伝うよ」
着いて来る気力があるのか。
まだまだ足りないということだな。
「お昼の食材を島の人が持って来てくれるらしい。ちな、バーベキューな」
「バーベキュー! やった!」
俺達は移動手段が無く、宿から商店のある港まではそれなりに遠いため、昼食が食べられないのではと不安だったが姉貴が手配していた。
しかし何故島の人が持って来てくれるのだろうか。
「あの軽トラかな?」
丁度バーベキューの準備が終わったタイミングで食材がやってきた。
「こ~んに~ちは」
「こんにちは」
「こんにちは!」
持って来てくれたのはお婆ちゃんだった。
「た~くさん持って来たよ」
「ありがとうございます。助かります。でも、どうしてお婆さんが?」
「お世話になっているあの子達の頼みだもの」
どうやら姉貴が所属する事務所は、この島を何度も使わせてもらっているお礼に物資を提供したり家の補修などの困りごとを解決してあげたり話し相手になってあげたりしているとのこと。
それを島の人はとても感謝していて、今回は事務所のお願いという事で喜んで俺達に食材を提供してくれるらしい。
俺達は事務所とは関係ないのに申し訳ないな。
でもそんな人の良い事務所だからこそ、島の人の心を掴んだのだろうな。
「べっぴんさんが沢山ね。だれがあんたの嫁かい?」
「はっはっはっ、ちが」
「あたし!」
「あらそうなの」
「おいコラ」
ややこしいことになるからマジで止めろ。
だがこのお婆ちゃんは若い人と話をするのが楽しいって感じだから強引に遮るわけにはいかんし、くそぅ。
「それでね、レオっちったら酷いんだよ!」
「あらまぁ」
俺が強く言えないのを分かっていて禅優寺は調子に乗って無い事ばかり言いやがる。
「だから嘘つくなって!」
「ふふ、仲が良いのね」
「はい!」
「違う!」
頭が痛くなってきたし、腹も減って来た。
ぐ~
「あっ……」
俺では無い。
顔を真っ赤にしているもう一人の人物だ。
「うふふ、邪魔しちゃってごめんなさいね」
「そんなことないです。いつでもお話ししましょう」
「ありがとう優しいのね。でも馬に蹴られちゃうから止めておくわ」
「は……はは……」
この島に俺達の関係が歪んで伝わってしまうのだろうが、外には漏れないだろうし諦めるか。
俺はお婆ちゃんから貰った大量の食材を確認した。
「うわ、超美味そう」
「何を貰ったの?」
「魚介類だな。早速焼くから皆を呼んで来て」
「ほいほ~い」
こんなに食べられるかなって量だけれど、沢山運動して疲れたからギリいけるかな。
「バーベキューですぅ! 肉!肉!肉ですぅ!」
「肉でぶぅ?」
「ガルルル!」
「いでぇ! 腕を噛むな!」
歯形までつけやがって。
「それに肉は無いぞ」
「何故ですかぁ!?」
「だってこの島、畜産やってないっぽいし。外から仕入れる貴重な食材を使えないだろ」
「そんなぁ! 肉が食べたいですぅ!」
バーベキューと言えば肉だから気持ちは分からなくはないがな。
「そんなこと言わずにこれ食ってみろよ」
良く分からん貝が焼けたので渡してみた。
零れそうな程に汁が出ていて超旨そうだ。
「うんまーーーーですぅ!」
「だろ?」
肉は無いが漁港があったので魚介類は沢山あるのだろう。
恐らくこれらは今朝獲れたての新鮮な奴だ。
旨いに決まっている。
「どんどん焼くからどんどん食えよ」
「玲央も食べなさい」
「分かってるよ」
「食べさせてあげようか?」
「断る」
「じゃあ食べさせてくれない?」
「断る」
『じゃあ』の意味が分からん。
どうせ熱いのを強引に口に入れて貰って悶絶して喜びたいだけなのだろうが、火傷なんてさせられるわけがない。
「あれ、レオっちこれは?」
「干物だな。獲れたての以外のも入ってるのか」
貰った袋を改めて確認すると、良く分からない物が沢山入っていた。
これはこの島で食べられている物もくれたってことなのか?
これは焼けば良いのか……これは調味料?
ううむ、分からん。
「良く分からないけど美味しいですぅ」
確かにな。
肉も焼きそばもマシュマロも無いバーベキューだったが、満足した。
「午後は何しよっか~」
「もう一戦やるか?」
「もう無理ですぅ」
なんだよ、情けないな。
お昼食べて復活しただろ。
「じゃあ自由行動にするか。俺に着いて来るなよ」
「「「え~」」」
「うざい。俺が勝負に勝ちまくったんだからそのくらい良いだろ」
「折角なんだからずっと一緒に遊ぼうよ~」
「ずっとって……分かったよ、なら一人ずつな」
「え、いいの!?」
スポーツ関連の勝負事は大体やり終えたからな。
ここからは趣向を変えて一人ずつ潰し、じゃなかった遊んでやろう。
「んじゃまずは栗林から」
「やったですぅ!」
「じゃあえみりん、向こうで遊んでよ」
「ええ」
さて何をしようか。
「栗林は……何でもない」
「何で止めるですかぁ」
だってこいつに希望を聞いたら妙なことかエロいことしか言わない気がするから。
「マラソンにする? マラソンにする? それともマ・ラ・ソ・ン?」
「この鬼畜寮父がですぅ!」
「ずっと走り続ければ痩せるかもしれないぞ」
「今日の春日さんは本気で酷いですぅ」
何を言うか。
わざわざ忠告してやってるんだぞ。
こんなに優しい人間は居ないだろう。
「だが冗談抜きでマジでなんとかした方が良いぞ」
「少しくらいぷにってる方が可愛いですよぉ?」
「それは男が言うセリフだろうが。それに『少しくらい』の範囲を越えそうだから忠告してるんだ」
「だとしても今日は南国ビーチなんだからそんなデリカシーの無い事言わないで欲しいですぅ」
南国ビーチで水着姿だからこそ言いたくなるんだがな。
「そんな栗林に朗報だ」
「?」
「南国ビーチらしくて、しかもゴロゴロ寝るだけで痩せる遊びがあるんだってさ」
「な、なんだってー!」
「そこは口調変えないのな」
その遊びで栗林がやることはとてもシンプルだ。
「それじゃあその辺りに仰向けになって寝て」
「それって……こ、こんなところでですかぁ?」
「ああ、優しくしてやるから」
「まだ心の準備が出来てないですぅ」
「柄にもない事を言うなよ。こういうのは勢いが大事なんだ。ほらほら」
「はわわですぅ」
この馬鹿、素直に寝っ転がりやがった。
ネタだと分かってノってるのは明らかだが、罠だと思わないのだろうか。
「それじゃあ、行くぞ」
俺は両手で優しくアレに触れ、栗林の上に……
「…………っ!」
めっちゃぶっかけた。
「だと思ったですぅ」
「はっはっはっ」
栗林が逃げる前に大量の砂を体の上にひたすらぶっかける。
砂浜で定番の遊びだろ、嘘はついて無いぞ。
「春日さ~ん、陽射しが顔に当たって痛いですぅ」
「おっとそうだな。タオルでもかけてやろう」
体は砂で隠れるから痛く無いだろうが、全く別の問題が発生するはずだ。
「あれ、春日さん、待って、ちょっと待ってですぅ」
「待たん」
「ダメで……あ、あれ、動けない、動けないですぅ!」
「どうしたトイレか。そのままそこでしちまえよ」
「あんた何言ってんのですぅ!?」
栗林の抗議など聞かずに俺はこんもりとなるまで栗林の上に砂を乗せた。
その重みで体が自由に動かせないようだ。
「暑い、暑いですぅ。これしんどいですぅ!」
「はっはっはっ」
そりゃあそうだ。
太陽で熱せられた砂を全身にかけられたら蒸し風呂のようになって暑いに決まっている。
大量に汗をかいて痩せるってことさ、嘘はついて無いぞ。
「どかして、どかして、上に乗るなごるぁ!」
「なんだよ、上に乗って欲しいんじゃなかったのか?」
「意味が全く違うですぅ!」
「はっはっはっ」
安心しろ、脱水症状にならないように気を遣うからさ。
「ほい、水。口に入れるから零すなよ」
「ふぇ?ふぁごぼっつごぼぼっ、げほっげほっ」
「だから零すなって言ってるだろうが」
「けほっけほっ、何で私だけ扱いがこんなに酷いですかぁ!?」
「気のせいだ」
姉貴に一番似てそうな栗林を相手に日頃のうっ憤を晴らそうとしているわけでは多分無い。
あ~楽しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます