第7話 探偵団結成!

中央にある噴水からチロチロと水が流れている。ランドセルを背負った翼たち は、放課後の中庭で、ベンチに腰掛け菊美を待っていた。帰宅する児童であふれる校庭と違い、ここはひっそりとしている。


「おそなってゴメンな~!」


突然背後から声がした。

いつの間にか来ていた菊美は、立ち上がろうとする翼たちを “ええよ、ええよ” と座らせ、自分はベンチの前にまわり3人の正面であぐらをかいた。


“女子が地べたにあぐらって..”


そんな翼の心の声など全く知る由もなく、菊美は意気揚々と話し始めた。


「昨日、みんなと話した後に考えてんけど、ウチらで少年探偵団作らへん?」

「少年探偵団!?」


3人は同時に叫んだ。


「ウチもいるから少年少女探偵団、やな」


菊美に向かって翼が言った。


「江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズに出てくるようなやつ?」

「おっ、翼。知ってるやん」


菊美が嬉しそうに翼を見る。翼は翔太と卓也に “昨日ネットで調べたんだ” と小 声で言った。


「そこでや!ちょ、これ見てくれへん」


菊美は “ウチが作ったんやで~” と言いながら、3人に神社で売っているお守りのような形の小さな袋を配った。翔太は黄色、卓也は緑、翼のは青だ。

3人色違いのそれは、同じように白い布切れが貼り付けられており、そこにマジックで「少年少女探偵団」と書かれている。


「中を見てん」


菊美に言われ3人が中を覗くと、何か型紙のようなものが入っている。取り出してみると、それは丁寧に蛇腹折りにされた画用紙であった。


「すげぇー! 俺、“団員 No2 ”だってさ」


卓也が声をあげた。

そこには、手書きで団員番号と共に全員の名前が書いてあり、蛇腹にたたまれた画用紙を開くと<団員は必ずこの団員証を持ち歩くこと><団員は秘密を守ること>と、細かく心得のようなものが書かれている。


「一応、ウチが団長で番号 1 番、でええかな?」


菊美は、オレンジ色をした自分の団員証を見せながら言った。


「ぜんぜんいいよ!すごく面白そうじゃん」


翔太が目を輝かせた。


何だかいきなり別の世界が開かれたような高揚と、自分たち4人しか持っていない団員証が不思議な連帯感を生んでいる。しかもこの団員証を、菊美は自分たちのために一生懸命作ってきたのだ。

少し得意げな表情の菊美を翼は見つめる。


胸がドキドキしていた。

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