3 透けている日々
ぼんやりとした頭を叩いてカチカチと音のする円盤を眺める。9、2?、8…なんだこれ?
あぁ違う反対に見ていた。口うるさい針はそんな無駄な時間にも働き詰めでカチカチカチカチ。のんびりやの短針は11時を指している。今日も今日とて目覚ましの音は聞こえてこない。ペットは飼い主に似るなんて言う。あいつも仕事をサボってぐっすり眠ってるんだと思った。
朝昼兼用のご飯。ちょっと足りなくなるけど起き抜けで食べるには若干しんどい量。少し濃くて、味の決まっているソース焼きそばはするすると吸い込まれていく。そうして綺麗に無くなっていく。
ようやく目が覚めてきた。いつもぼーっと見ているお昼の番組がエンディングに入った。
どこか遠くに出かけよう、と思っても時間的にもピンと来ない。そうだ。買い物にでも行こうか。上着を羽織っていざドアを開けようとする。動かない。がしがしと力を込めてようやく押し込む。ぴくりと進む。ふんばって、ふんばって、ぎぃと古めかしい音を立てながらその扉が開くと、待ってましたと言わんばかりに大勢の来客が入ってくる。彼らはお友達を沢山連れてきた様子で、巣立ってきた葉っぱ達や用済みと捨てられた可哀想なビニール袋も一緒に吹き込んできた。思わずぶるぶると寒気を感じて慌ててドアを閉めた。気がついたら上着を脱いでベッドの中に潜り込んでいた。
飄々とした風はいつの間にか秋の夕暮れを冬の寒空に変えてしまっていた。どうしようもない僕は仕方なく布団にくるまる。カチカチとまだ秒針は鳴っている。秒針の音の中には入れてもらえなくて不満げな風がヒューヒューと文句を言っている声が混ざっているのが聞こえた。
うつらうつらと瞼が下がってくる。ふるふると頭を振ってももう遅い。布団が僕を離すことなく包んでいる。誰も助けてくれない。この家はすでに僕とおんなじ、だらけきってる奴らばっかりだ。働いてるのは電気とガスと…ガスは最近3つ目のコンロが着きにくいからサボり気味だな。あと秒針。粛々と、小さくとも響き続けるこの音だけは僕をほんのりとせかしてくれる。そんな秒針の音を掻き消すように風がより強く、入れろと叫んでいる。絶対に入れたくないとそう思っては居るけど窓はしっかり仕事をする気がないのか風を少しだけ通している。ぽかぽかとした体によくも閉め出してくれたなと顔に怒りをぶつけてくる風が頭を冷やして。暗転する。
そうしていつしか、認めてもらっていないあいつがジリリリリとベルを鳴らして。また朝日が昇ってくる。
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