Episode 2. Interview. 2019 New Year: Talking about Japanese Soccer.
つい先日の世界初の男女混合サッカーAマッチ、キリンスーパーラバーズチャレンジカップクリスマスで、日本は強敵イタリアと宿敵アルゼンチンに勝利し優勝する。その寄せる感情の波は凄まじく、まさか日本が競り勝てるとは世界同時中継で震撼した。
2020東京オリンピックで行われる男女混合サッカーは、どんなクレイジーが待ってるんだで、世界中の報道が色めきたってる。それは2018年12月31日の今日もか。
そもそもで言えば、俺の鹿嶋フェニックスはJ1ディビジョン4連覇し、天皇賞も意地で優勝した。33歳とは言え肉体の疲労は来ている筈なのに、高揚感で身体はもっとサッカー、その先を求めて止まない。
世界的に意義のあるカップに出れた事は、まだ行けるのか、行けた、そして結果を残した。その積極性は改めて危険極まりない。
その昂ぶった感情を、徐々に慣らして行こうと思い、熱烈過ぎる鳳凰書店のサッカー雑誌ジャストアヒーローの緊急インタビュー「2019新春日本サッカーを語る」を受けた。
俺はタフとして、皆疲れきっているだろうから、てっきり俺森山拓史だけかと思ったら、副監督兼フォワード安倍琢磨・攻撃的ミッドフィルダー南総路慧・ゴールキーパー太田隆大が、皆選りに選って日本代表正式のパンツスーツで、都内の最高級帝団ホテルのスイートに集合していた。
もう少し砕けたらどうなのと言うも、森山が言うかと、ほとほとクスリとなる。
インタビューの概略としては、栄光をさぞ語れでは無く、ここ迄の道のりを1時間枠でまとめましょうと。インタビュアーの上澄彩女史が今も感動のまま腫れぼったい目で諭す。
順番としては、レディーファーストとして、慧が1番手。この間、館内で時間を潰して下さいと、上澄さんから各種チケットを渡されるも、全部の話が爆笑だろうで、視線を交わすままにバックで聞きかじる事に決めた。
まあ何れも募る事ばかりだ。そしてこのテンポの感じかで、俺の思いを章立ててなぞって行く。
そして2番手は自然と俺になった。日本代表における” 釣瓶落とし”とはを語らないとになる。今回の男女混合サッカーAマッチで抜群のコンビ評価を貰った、同じくボランチの女史片野華も入れて、どうしても語らないと行けない。
——森山さんと華ちゃんによる、メンタル強すぎる中盤制覇でしたね。ここは日本代表のもう一つのスタンダード、守備のみアンカー二人よる” 釣瓶落とし”の復活と考えてよろしいですか。
「スタンダードのそこはどうですかね。過去の全てが成功事例ではなく、果てしないトライ&エラーですよ。ボランチは、どちらかが前に出れば、一方は構える。サッカーに置ける釣瓶の動きは基本です。そうなんですけど、是枝A代表監督は、鶴瓶ぶち切っちゃって、一体何を考えているかサッパリです。俺としては、パサーとアンカーが居てこそ、心が休まりますけどね」
——でも、これ迄に” 釣瓶落とし”は十分機能していますし、日本の中盤の底最高ですよ。もっと喜びましょうよ。
「まあ、最近も、としてはね。でもさ、今回の俺と華のダブルアンカーで、中抜きされて放り込まれたでしょう。これは厳選されたA代表だから、最終ラインにゴールキーパーに、後の処理を任せられる訳であって。南アフリカワールドカップのA代表の様に、何でサイドバックが俺らの前に位置取るの、後ろセンターバック2人にゴールキーパーで、どっかり開いたスペースは、アンカーが何とかしろの酷すぎる体験は、もう真っ平ごめん。でもさ、これがA代表の洗礼でしょうも、全く違うよね。まあ、あの時は純粋に頑張ったけどさ」
——あは、そこ今でこそ大受けですよね。でもポイントを潰してに潰してましたよね。どんな肺活量しているんですか。
「さあね。それが出来そうな奴引っこ抜いたら、俺森山拓史と真島健太郎で完全固定だよ。是枝A代表監督の招集するメンバーって、全世代何処から引っ張ってくるかなのに、何で俺らに無理強いさせる訳。まあだよ」
——でもその招集の中に、稀代のボランチ職人森山拓史が含まれるのですよ。物凄いと思います。
そう言われるとそうかになる。俺は叩き上げの分類だ。
俺は石巻市の商業高校のサッカー部で、何ら強豪校で無い為、高校を卒業すると、バイト先の石巻の魚市場に就職が半ば決まっていた。
ただ、3年の最後の年にサッカー部の手応えが良く、結束が強まり、当たり強いチームに仕上がった。まさか高校サッカー選手権本選行けるかも、何の事は無い県予選ベスト8で散った。
それをよく見ていたのが、鹿嶋フェニックスのスカウトで、俺の中盤の阻止率がかなり高い事から、まさかのJ1クラブに誘われた。いや俺は就職がでだったが、本選出場出来なくても森山君の様な奮闘があれば、俺も続こうという男子も出てくる。夢の先頭に立って見ないかと強く引き止められた。
俺としては、サッカーは好きだが地元も捨てがたいと日々悩むと、同級生にふざけるなを浴び、融通の効かない親父には海岸から真冬の海に投げ飛ばされた。俺の意思がまるで尊重されず理不尽だが、嫌われたく無いので鹿嶋フェニックスに入団した。
まあ鹿嶋には2年入れば良いかで、休みの日には求人雑誌を見ては、漁業関係の再就職に夢を馳せた。
ただそれも、夏場辺りから、チーム帯同から、控え、そして途中出場、いつの間にかニューカマーのボランチでスタメンに入る事も度々だった。そしてどうしてものJ1ディビジョンは熾烈な場で、いつの間にか漁業関係の再就職の夢は仕舞う事になった。
若くしてスタメン定着してからは欲が出た。2004アテネオリンピックに選ばれてみたい。ここは栄達のそれでは無く、故郷の皆応援してくれるし、ヤングにも夢をだった。ただそれは叶わなかった。
アンダー23でも日本代表という場は、ポリバレントで複数のポジションをこなさなければならない。俺に出来る事と言えば、中盤の底で重心を読み取り、ボールを確実に奪う事だけの一芸のみだ。オリンピック出場メンバーが18名である為、ゴールにどう絡めるかも争点になり、俺は下馬評通り早々に弾かれた。
本来ならば、そこで不貞腐れる筈だが、純粋に職人と評価されると使命感が湧くタイプなので、鹿嶋フェニックスの試合で日々研鑽し、三強復興に邁進し、上位勢に居座る事が出来た。
そんな油断をしたある日、2010南アフリカワールドカップアジア予選のメンバーに、何故か初招集された。
是枝A代表監督から直々の電話を貰ったが、俺はそこ迄サッカーエリートでは無いし、そもそもアンダー23代表経験が無く、海外試合もAFCチャンピオンズリーグのグループリーグ位しか無いですとやんわり断った。それで十分だとガチャと切られた。いや、俺は出来るアピールをした訳ではまるで無い。
——キター、“釣瓶落としの後始末”。いやー痺れますよね。2010南アフリカワールドカップアジア最終予選にして、ホーム最終試合の、オールオアナッシング。Aグールプ2位抜け、プレーオフ、そして予選敗退の選択肢なんて、どう言うデスロード何ですか。まあ横浜国際総合競技場の狂想曲は未だですよね、ふう。
「ああ、思い出す程にギリギリするね。ホーム日本国なのに、あのスタンドの大音声と来たら、今もこの代表スーツがビリビリ振動するかの、錯覚をしそうだよ」
スイートにいる皆が、あの最終予選に、悲喜交々になりながらも、最後はどうしても見上げてしまう。果たして何が正解だったのか。攻めと守りの配分、それが今もさっぱりだ。
そんな雰囲気を読んでか、慧が皆の背中を叩いて行く。サッカーに奇跡と言うものがあるのを、あの日、深く刻まれたからだ。
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