5ー④
ー翌日の放課後
3人は電車で隣の市へ。コメットはここから通っているのである。
「着いたわよ。ココが、ワタシの家」
「わぁ……」
「でけえ」
コメットの家は一言で表すと豪邸である。
「コメちゃんの家って、何やってるの?」
「ワタシのグランパが翠凉学園の理事長って設定だったと思うけど、それはまだ生きてるのかしらね」
「“話を回すのに都合がいい金持ちキャラ”がレギュラーメンバーにいるのって、どうかと思うけどなー」
「二人とも、コメディだからってメタ発言はやめようよ……」
3人は東錦邸へと入ってゆく。
「さすがに執事やメイドはいないんだなぁ」
「でも、中庭に鯉のいる池があったよ……?」
「ここは元々旅館だった物件を買ったの。鯉を飼える池があるってだけでグランパはここを選んだらしいけど、無駄に広くて部屋も多いわ。よかったら二人とも、今度泊まりに来なさいよ」
「じゃあ志麻ちゃんとさくらちゃんも呼んで女子会しよう」
「アクアリスト女子会かぁ。 楽しそうだね!」
会話をしながら広い建物内を歩き回る内にコメットの部屋へ辿り着く。
「ココがワタシの部屋!」
襖を開けて入った先は和室。かつて旅館の客間だった名残である。
「わー!金魚だ!!」
60cm水槽が2つと、90cm水槽一つが、扉を取っ払った押し入れの上下にそれぞれ 置かれ、川砂と石、流木のみでレイアウトされている。金魚は水草を食べるため、それらは植えられていない。
「こっちはランチュウで、こっちは朱文金かぁ」
金魚は同じ仲間であっても、品種による体型の違いから泳ぎの得手不得手があるため、琉金の様な丸型と和金の様なフナ型は混泳させないのが定石とされる。
「こっちの水槽は……フナ?」
礼が指差す上段の90cm水槽に泳ぐ魚達は、金魚の様な華やかさの無い灰色に近い体色だが、尾鰭がやたらと長く、ただのフナとは違った印象がある。
「これは鉄魚だよ」
「てつぎょ?」
金魚はフナを改良して生まれた観賞魚である。元々同じ種族であるが故に金魚とフナは交配が可能だ。そこでコメットや朱文金といった尾鰭の長い品種の金魚とフナを交配させ、フナの体色と体型に金魚の長い鰭を持つ魚を作り出した……それが鉄魚なのである。
「さすがはユイね。よく知ってるじゃない。フナの野生味ある色に金魚の優雅さを併せ持ってるのが鉄魚よ」
「へぇ〜知らなかったなぁ、こんな魚がいたなんて」
「確かに金魚に比べてマイナーだからね。金魚やフナは誰でも知ってるけど、そのハイブリッドの鉄魚はアクアリストじゃないと知らないもん」
「だからワタシはもっと鉄魚の魅力を世に知らしめたいわ!このエピソードを読んでる人たちも鉄魚に興味を持って欲しいものね」
「だからメタ発言はやめようよ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます