4ー⑤
「おー赤比!そういやここの部に入ったんだったな。何でもラッパ吹く方の吹奏楽部と間違えたとか!」
はははと笑う加藤。
「加藤先生は我が部の顧問さ。アクアリウムを嗜む先生がいると聞いて、僕がお願いしたんだよ」
光青が生物部の部長となり水槽学部と名を改めた段階で、それまで生物部の顧問を務めていた教師が転勤していった為、彼女に顧問を務めるよう願い出たというのだ。
「アクアリウムっつっても海水専門だけどなー。アタシは水泳部の顧問がメインだから、こっちにはあんまり来れてないんだよ。まぁでも週に何回かはこうして生徒と水槽の様子を見に来てるっつーワケ。そんでこれがアタシの水槽!!」
加藤が指さしたのは45cmの海水魚水槽だった。
「この水槽、センセイのだったのね!」
コメットの言葉に加藤は
「ルリスズメダイだ。綺麗だろ?アタシは地元が海の近くで、しょっちゅう潜っては魚を見て育ったんだ。 んでも、教師になって赴任してみりゃ海の無い埼玉県!だから海が恋しくてここで海水魚を飼ってるって事だな」
「でも、世話をしてるのは殆ど僕ですよ?」
「しょーがねーだろー?水泳部も見ないといけないんだからよー。 それに海水魚の話し出来るの、オマエくらいなんだよ。 みんな淡水魚にしか興味ねえんだからさ」
と、加藤は部員たちの顔を見回してゆく。
「だって海水魚って基本的な世話が淡水より手間かかるんやもん。塩分濃度まで気にして海水作る所からハードル高いわぁ」
「観賞用に流通している魚の量も淡水に比べて少ないから選択肢が狭いわ。海藻だって水草に比べて少ないからレイアウトの幅も無いし……」
と、さくらと志麻。
「何だよ一地球上の水は淡水より海水の方が圧倒的に多いし、生き物の数だって川や湖より海の方が桁違いに多いってのに、アクアリウムじゃ海の方がマイナーなんで理不尽じゃねーかよー」
ふて腐れる加藤。
「子供みたいな事言ってんなよ、姉ちゃん」
「姉ちゃん!?」
寅之介の加藤に対する呼び方に反応したのは礼とコメットだった。
「おっ?後輩が出来て大人ぶる様になったか寅之介~~」
自らより上背のある寅之介に対し、ジャンプしてヘッドロックを掛ける加藤。
「いててっ……この人と俺は従姉弟なんだよ」
髪色やジャージという服のセンス、纏った雰囲気の近似性が、より一層その信憑性を高めている。
「ところで先生、明日は水泳部が休みのはずですから、ガサガサの引率をお願いしてもよろしいですか?」
光青が尋ねる。
「また急だな!?海なら泳げるけど、 オマエらの事だから川とか沼だろ?」
「先生、まだ4月だから海も泳げませんよ」
志麻の突っ込みが伝わったかどうか解らない様子で加藤は熟考する。
「……遠藤、オマエんちが海水魚とかサンゴも仕入れてくれるならいいぞ」
「それはお父さんの仕事だから、あたしに言われてもハイとは言えないよ」
「 ユイ、アナタんとこの店はマイナージャンルも相手にしないとネット通販の店に客を取られちゃうわよ?」
「痛いとこ突くなぁ……ただでさえチャ●ムが脅威なのに、Amaz○nまで生体を扱い始めてヤバいんだから。海水も日淡もお父さんに仕入れるように言っとくよ」
「よし、ならアタシは車を出してやろう!」
「ありがとうございます、先生。それじゃあ明日の8時30分に学校に集合だ!!」
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