4ー④
水槽学部員達は机を囲むように着席し、その様子は会議さながらである。 礼達がベランダで何やかんややっている内に、さくらも部室に来ていたようだ。
「それでは緊急ミーティングを始めるぞ。今日の議題はコレだー!!」
光青が上下スライド式の黒板を上下させると、隠れていた方の黒板に、こう書かれている。
第5回!水槽学部ガサガサフィールド調査会!!
「……ガサガサ?」
「何よソレ?」
礼とコメットは聞き慣れない固有名詞に困惑する。
「マジかよ光さん!ガサガサやんの!?」
「まだ4月やけん水も冷たいんやないの?」
「あたし、部員になってガサリに行くの初めて!!」
二人をよそに盛り上がる唯と2年生二人。
「2年生と、昔から私たちと遊んでる唯にはお馴染みだけど、礼ちゃんとコメットちゃんには説明しておくわね。フィールド採集ってのは、野外で動植物を採取して観察すること、ガサガサってのは網で茂みを文字通りガサガサやって生き物を捕まえる事よ」
「身近な自然環境の調査研究は水槽学部の活動方針の一つだし、今回はコメットくんのビオトープに入れる生き物を捕まえるのも兼ねている!……ほら、過去の活動記録をまとめたモノだ」
光青は過去の活動記録─と言っても水槽学部として活動を開始したのが去年なので、片手で数える程しか行ってないが。を記録した、お手製の資料を礼とコメットに見せる。 写真等も添えられパソコンで丁寧に作られたそれらは高校生とは思えぬほどのクォリティである。
「見てアヤ!ヨシノボリにテナガエビ、オヤニラミまでいるわ!!」
「ごめんコメちゃん、私まだどれがどれだか解んない」
憧れの日淡を捕まえる部員達の姿を見て興奮するコメット。対照的に落ち着いた様子でページをめくる礼も、
「でも、楽しそうですね。自然で生きてる魚って、私ほとんど見たことないですもん」
「はっはっは。そうだろうそうだろう。というわけで明日、土曜日で学校は休みだから
光青の意見に反対する者はおらず、全員参加の意向を見せたが、礼が手を挙げる。
「比洲川って、隣の市じゃないですか!?どうやって行くんです?」
「うむ。確かに学校からは違い。が、我々には移動手段がある。 ……そろそろ来る頃だな」
光青が壁の時計を一瞥し、そう言った直後に入り口の戸ががらりと開く。
「オーッス!壬玄一、アタシの魚達は元気かー?」
入ってきたのはジャージ姿の成人女性。生徒ではない。そして、礼はその女性をよく知っている。
「加藤先生!?」
礼と唯のクラスの担任教師加藤らら、その人だった。
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