四
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日課のウクレレ練習は、生きがい大学東松山校を卒業後ウクレレクラブの延長として、月二回高坂にある高坂丘陵公民館に旧部員が集まり、同期の田中が指導してくれる練習だが、いまだに続いている。
いきがい大学を卒業して十四年となるが、当初の部員に田中の数人の知人が加わり倍のクラブ員数となった。クラブ名は「マカマカ」で、さらにスチールギターが加わった。今はコロナ禍もあり室内の練習が主体であるが、コロナ前は定期的に老人ホームへ行っては演奏を披露したり、一緒にウクレレ伴奏でホームの皆と歌ったりと、途中休憩を挟みながら二時間ほど場を盛り上げていた。
日頃の練習も、目的を持たないと熱が入らないし、曲を弾く精度も上がらないことがよくある。だらだらと数曲を時間稼ぎのごとく演奏しているようでは上達が見込めないし、張り合いがなくなる。そうなれば、時には何かと理由をつけて休む者も出て来る。そう言う俺ですら、時々弓道練習を言い訳に休むこともあるから、他の部員を咎められない。
それでも先生は、熱心に指導してくれるので有難い。そんなこんなで、いまだに高坂丘陵でのウクレレ練習を続けている。当時ウクレレクラブを立ち上げたとき、田中が言っていたことで、「とにかく毎日ウクレレを触ること。即ち練習を最低三十分は行なうことを日課にしてください。そうしないと例え上達したとしても、手を抜くと元に戻ってしまうので、宜しく」と、説教じみた話をしていたことを思い出す。
例に出すのも憶がましいが、ピアノにしてもギターや管楽器なども一日休むと取り戻すのに三日は掛かると聞く。従って素直に捉え、今も実行している昨今であるが、時々野暮用でウクレレ練習をさぼることがある。本来ナンセンスなれど、それは許容範囲と勝手に解釈しているが、言い訳と言った方が正解かも知れない。
コロナ禍前は、俺自身高坂丘陵での練習だけでは飽き足らず、川越市社会福祉協議会のボランティア活動に入会し、当時から一カ月に二回ほどの割合で、老人クラブやデイサービス施設での演奏の依頼を受け、訪問してはウクレレ伴奏で一緒に唄ったりしていたし、こちらも続行中である。しかしコロナ禍になってからは、それも中断を余儀なくされている。
「しかし、コロナ禍というのは困ったもんだ」
戸惑いつつも「一応ワクチン接種は四回済ましているが、罹らないと言う保証はないし、また罹ったとしても重症化を防ぐと言うことらしい。けれど、身近な人に感染させてしまう危険性があると言うから厄介だ」
第一波、第二波。そして三、四、五波と続き、さらに六波。この状態は際限がない。
「まったく、何時まで続くことやら…」嘆くこと然りである。
それでも、自宅でのウクレレ練習は止めることなく続けているものの、社会福祉協議会からの老人ホーム等での演奏依頼が皆無となった。
「これも、致し方ないことかな…」高橋は踏ん切りがつかぬのかもやもやが続き、ため息混じりにこぼしていた。
そんなこんなで、ウクレレ演奏活動はこの辺にしておこう。
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