〇第八話 やさぐれシンデレラと呪術師の共同戦線
「そんな……!」
早く夕飯の買い物をして帰らなくては、叔母に何を言われるかわからない。
「あたし……あたし、とりあえず今日は帰ります。お話はまた今度――」
「そんな時間はない。このままでは三日と
死ぬ――?
「どういうことですか」
死。それは予想もしていなかった言葉だ。
「火が
「ば、バカみたい。そんなことあるわけない――」
「現に、もう
青年が
「え……?」
とっさに見ると、発光した左手は
「嘘っ、なにこれ!」
さっきまでは光っていただけだったのに。かざした左手の向こう側に青年の険しい顔が透けて見えた。
「放っておけばその
「そんな!!」
雛子は左手をこすったり振ったりした。が、光りは消えない。
「うそうそやだっ、なんなのこれっ」
雛子は半泣きだ。しかし青年はそんな雛子の様子にはおかまいなしに話を続ける。
「妖火が消えれば、妖は
この二十一世紀の日本で殺し合いとか戦争とか、何を言っているのだろうと雛子は思うが、青年の様子には嘘とかハッタリとか
「妖火が無くては、ヒトだけでなく妖も困る。この国に生き残っている妖が行き場を失うことになる。俺は《最後の妖火》の《守り人》として、妖火が失われることをなんとしてでも防がなくてはならない」
青年は雛子を
「あ、あたしには関係ないです、そんなこと」
「君は死にたくないだろう? 俺と君は利害が一致している。だから
今度は雛子が青年を睨み上げた。
青年の言うことは
「冷静に命令しないでください!」
「命令じゃない。事実を話し、
「……!」
その通りなので言い返せない。
早く帰らなくては叔母をさらに怒らせる。その先に待っているのは、シンデレラも真っ青の
けれども自分は今、
となると、選ぶべきは決まっているではないか。
選ばなくては、生き延びることができない。
(生き延びなければ、お母さんとの約束は果たせない)
死ぬのは怖くない。
(だけど、あたしは)
――猫を飼う。
その母との約束を、何としてでもかなえたかった。
叔母の家の階段の下で、どんなに暑いときも寒いときも、ひもじくても、今までそのために耐えて頑張ってきたのだから。
「……わかりました。その闇灯籠とかいう物を、探します」
声が震えているのは泣いているからではない。腹の底から突き上げてくる激しく熱いものが、雛子の声を震わせる。
青年はそんな雛子を
「了解した」
頷くと、ぐったりしたままの
雛子は手を握りしめ、青年の後ろから続いた。
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