安全第一

 最初のクロさんたちを外に送り出した俺は、さらにこの立体迷路と化した議員会館の探索を続けているのだが……。


『ご迷惑をおかけするため、安全第一で爆殺中です!協力お願いします!!』


「誰がするかボケェ!!!!」


 俺は爆薬を満載して迫りくるロボをミニガンで撃ち抜く。

 弾丸で撃ち抜かれた奴は即座に爆発。

 大きな火球が発生して、最初から横倒しになっていた部屋を吹き飛ばした。


 <KABOOOOOOM!!!!>


 爆発は見事に建物を吹き飛ばし、ピンク色の椅子やらテーブルやらが空を飛ぶ。


「アホか!!建築現場じゃなくて解体現場になってるじゃねえか!!」


(頭痛がしてくる光景です。どんな指示を出したら、こうなるんでしょうかね?)


(その議員とやら、どんだけ無茶苦茶な奴なんだろうな)


 別のクロさんのグループを見つけなきゃならんが、イヤな予感しかしないぞ!


 だまし絵空間にずっといると、俺の脳が悲鳴をあげる。

 なので早く用事を済ませて出ていきたいのだ。いや、オレに脳は無いんだけどね。


『皆様の住まいづくりをお手伝い!!機人組におまかせですー!』


『家から出勤なんてもう古い!家が歩かないなんて誰が決めた!これからの時代は、機動住宅にお任せ!!防犯も付属した88mm砲と機関銃で完璧です!』


 おい待て!なんだ機人組って!!!ただの風評被害になんだろうが!!


 大砲がついて2足で歩く家とか、なんかスター○ォーズで見たことあんぞコレ?!


(やりたい放題しやがって……!)

(Cis. さすがにこれは悪夢の産物ですね)


『犯罪者を発見!家の近くで動くものは、潜在的な犯罪者なので射殺しますね!』


 ……ムチャクチャな論理だな。


 機動住宅は俺に向かって主砲の88mm砲を放ってくる。


 88mm砲ともなると、そこらの家屋では遮蔽物にもならない。


 これは機動力を生かして、砲が狙える範囲の外に出るべきだな。


『戦闘機動をとるということは、間違いなく犯罪者ですね!!射殺します!!』


 機動住宅は見る限り、主砲塔を進行方向にしか持っていない。砲がカバーする範囲外、側面や背面に回られると弱いはずだ。


 それに家という事は、まともな装甲は無いはず。オートキャノンの火力でも、十分に仕留められるに違いない。


 <DOM!DOM!DOM!>


 俺はオートキャノンから37mm砲を発射する。

 しかしその時不思議なことが起きた。


 機動住宅の装甲が爆発し、剥がれ落ちたのだ。


 ――これは、爆発反応装甲か?!


 アホか?!アホなんだな?!砲弾の防御を第一に考えた住宅って何だよ?!


 もっとこう断熱性とか見た目を重視しろや!!!!!


「クソ!設計者の脳みそが複雑怪奇すぎて、弱点の想像が出来ん!!」


(Cis. 真面目に考えるだけ、損をするかと)


 俺はミニガンで爆発反応装甲を処分した後、ナビさんのガイドにしたがって、機動住宅の中枢をオートキャノンで撃ち抜く。


 さすがに疲れる。

 おもに突っ込み疲れという奴だ。


 主力戦車による襲撃を想定した住宅とか聞いたことないわ。


 世紀末でもこれより平和的な家を作ると思う。


 機動住宅を始末した後、議員会館の中に警報が鳴り響く。


 もう何が起きても驚かないぞ。


 <ヴィー!!ヴィー!!><警報!警報!>

 <施設内に重火器を持った不審者が現れました!>

 <住民の皆様は、防衛兵器をもって犯罪者を殲滅せんめつしましょう!!>


 ……両手に花束みたいに重火器を持ったビルが俺の前に現れた。


 うん、これは予想を上回ったわ。なにしてくれてんの?


『落ち着きやすい環境の実現のため、あらゆる生命活動を停止させますね!!』

『リラーックスDEATH!!!!』


「心臓の鼓動は騒音じゃねえ!!!いい加減にしろ!!!!」


(ねえ、ナビさん?キツネさんたちってファーザーから生まれたよね?それがこの状況に1ミリも関係してないって、自信を持って言える?)


(……ノーコメントでお願いします)


(心当たりはあるのね。)


『生活水準の向上のため、あらゆる強力兵器の使用制限を解除します!』

『Kクラスシナリオを想定した、ハルマゲドンモードに移行します!!!』


 全てがイコールで結びつかねえよ!!!!


 ん、ハルマゲドン?核戦争……?


 ちょっとまて、マテ、待って、ちょ、あ、これやばくね??????


(ナビさん、クロさんって俺の持ってる素材、使えるんだよね?)


(Cis. そうですが)


(水爆の材料も自由に使えるよね?)


(……あっ)


(機人様ァァァ!!!!超やべえことになってますよこれ!!!!!)


 ナビさんも素に戻るレベルのヤバさじゃねえか!!!!!!

 うおおおおおお!!!どうすればいいんだこれ?!!!!


(ハッキング!!!ハッキング!!!とにかくハッキングですうううううう!!)


(うおおおおおお!なんとかなれえええええ!!!!)


『超強力兵器の使用まで、10・9・8』


(とにかく機人様!突っ込んでください!!!ナビが全力で何とかしますので!)

(ウォォォォ!!!!!!)

 ・

 ・

 ・

「……これをやったやつ、絶対に殺す。久々に命の危険を感じたわ」


 俺の目の前にはプスプス煙を上げる巨大ロボがひっくり返っていた。


(Cis. まさかここまで危険な状況になっていたとは予想外です)


(機人様の素材管理を一時的にロックしました。クロさんチームは一時的にですが、これ以上何も作れません)


(助かるわ。俺にはこれの操作さっぱりだから……)


(何で最初っからこれをしなかったのでしょう。クロさんチームの作業反応が消えたことで、生命反応の探知が出来ました)


(よし、そいつが元凶だな。クロさんたちに余計なことをさせた奴を、今度こそしばくぞ。慰謝料にプロジェクト超過にかかった費用の請求も全部だ!!全部!!)


(Cis. 世界の危機を引き起こした責任を取ってもらいましょう)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る