豆腐よさらば

 ビッグバードにのって目本からポトポトへ帰った俺たち。

 さっそくアレコレに手を付け始める。


 まずはキツネさんたち。

 よちよち歩くのはとても可愛らしいが、その区別がつかない。


 なので白、黒、黄緑、青の4種類の帽子と手袋を作り、25の番号を振って4組に組分けした。


 資材調達はシロさん、建設担当はキミドリさん、維持管理はアオさん、そして外部への遠征を担当するのがクロさんだ。


 さっそくクロさん達にはイギニスに行ってもらって、世界会議の会場と、各国の議員宿舎をつくってもらう。これの監督はロイの担当だ。


 そしてポトポトに残った3組はさっそくポトポトの内政に取り掛かる。


「……内政に取り掛かると言っても、何も無い故に、かえってどこから手を付けたものか、悩むな」


 ミリアにそう聞くと、はっとした様子であることを提案してくる。


「あっそうだ!機人様が作られたお家を、普通のお家にするとかどうですか?」


「確かに、夫婦の営みをするどころではありませんからね♡」


 デドリーさんのいうことはアレだが、確かにもっともだ。

 あの家、プライバシーもなんもあったもんじゃないからな。


 俺が作った豆腐ハウスは、よくよく考えればトーチカであって家ではない。

 窓は穴だし、ドアすら無ぇんだもの。


 よくよく考えなくても大概なもんに住まわせている。

 これだったらビッグバードの格納庫の方がちゃんとしてるわ。


「……うむ、キミドリさん、エルフの皆が住みよい家を作ってはもらえぬか?」


「「かしこまりです~!」」


 キツネのヌイグルミたちはさっそく作業に取り掛かり始めた。

 帽子を白いヘルメットにかえたシロ組さんたちが、トラックに乗って森に出かけ、チェンソーでばっさばっさと木材を切り倒していく。


 シル○ニアな森の仲間たちが、森を切り拓いているのはなかなかにシュールだな。


「ホッホッホ、何か用かの?」とか語り掛けてくる長老の木でも、容赦なく伐採して板に加工してる感じだ。とても子供たちには見せられない。


 これではシル○ニア森のヤベェ仲間たちと環境破壊になってしまう。

 いや、森の仲間たちものか?


 俺がそんなどうでもいいことを考えていると、シロさんたちが大量の木材と石材を集めていく。すると、俺のクラフトメニューのカウントの数字が爆裂的に上がっていく。


 一体どうやってるか知らんが、マジですごいな。


(ほんとにどういうメカニズムなんだか)

(簡単に説明すると、モノを隠してしまえば、モノは誰かが見るまで、情報記憶だけになるわけです。すると実体をすべて保存する必要はないわけです)


(なんかナビさんが詐欺みたいなこと言いだした)


(よく創作物に出てくる魔法で、アイテムボックスってあるじゃないですか?原理的にはアレと全く同じものですよ)


(物質銀行みたいな?つまり情報、債券だけでもっておけば軽いよねと?)


(良い例えですね。まさにそれです)


(そんなことができるようになったのに、なんで滅んだんだが……)


(銀行の例えは実に良い視点ですね。ちなみに、銀行制度の問題点は以前、イギニスで機人様に説明しましたよね?)


(――なるほど、全て理解した……。取り付け騒ぎで人類が滅んだのか)

(Cis.)


 つまり、現実に存在しない状態で物体を取り扱えるようになったから、頭の足りないどこかのアホが、それ以上の事を約束事として取引してしまった。


 で、物質的な借金で世界がパンクしたというわけだ。


 そして世界のつじつま合わせとして借金チャラの徳政令として

 地球上のあらゆるものを、資源をひとまず初期化したと。


 地球初期化とか、とんでもないことをしているが、これをしないと、地球自体が無くなるとか、たぶんそれくらいヤバイ異常事態に直面したんだろう。


 旧人類のやらかしについては、大体こんな感じの想像がつくな。


(俺は手に入れた分だけで、何とかするとしよう。連中の後追いはゴメンだ)


(Cis. 実に賢明な判断かと。)


 シロさんが手に入れた物資で、キミドリさんたちが早速建築に取り掛かる。


 トンテンカンと足場を作り、木材のフレームを作り、壁と屋根を作り、どんどんとお家が形になって来る……。


 二階建ての昭和感のあふれる、ちょっとアットホームな感じの住宅が、ほどなくして出来上がった。


 木材を手に入れて乾燥もなしにいきなり建築とか、流石未来技術。

 チートきわまるね。


 そしてこのお家の見た目、うーんこれは……。

 どうみても、の○太くんの家じゃん。


(ナビさん……どうしてこうなった?)


(機人様の記憶から、一般的家屋のカテゴリで記憶強度の強いものを選定した結果、こうなりました。クラフトメニューには一般家屋が存在しませんので)


 なるほど、良い家なのは確かだから、ま、いいか!!

 明らかにファンタジー世界にはそぐわない建物だけど……そのうち慣れるだろ。


「すごいですね、ちょー豪邸じゃないですか!」


「これなら、家族が増えても大丈夫ですね」


 エルフ達のこの先の為にも、これには早めに手を付けないといけなかったな。

 うむ、ようやくポトポトが街らしくなってきた。


 豆腐ハウスよさらばだ……。

 今までありがとう。


 あとはオーマだが、あっちはどうなってんのかな?


 革命を期待してあれこれやったけど、不気味なほど何も聞こえてこないんだよな。

 イギニス、目本とあれこれやっている間、まるでノータッチだったが……。


 そうだ、たまには見に行ってみるか。

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