オッサンの隠れた趣味
俺の前にひょこひょこと歩いてきたそれを見る。
見た感じは、キツネのヌイグルミが歩いてるような感じで、とても可愛らしい。
しかし忘れてはいけないのは、これはナビさんの作った存在だ。
きっと何か、とんでもないトラップがあるかもしれない。
ボタンのようなくりっとしたつぶらな目。
ああなんとも残酷で、悪意を感じさせる目をしている。
こいつは恐怖を感じない、恐怖を感じさせる存在に違いない。
そして顔からツンと飛び出すマズルの上に、ちょんとのった鼻。
奴はその鼻で恐怖を嗅ぎ分けることができる。
人の不安を察知して、どうしたの?と聞きさえするだろう。
このキツネの顔を注意深く観察してみる。
全くその顔はまるっとして、何を考えているかよくわからない。
きっと油揚げひと
コイツにとってジュネーブ条約はジュネーブ提案でしかない。
奴が次に何をするのか、俺にはまるでわからない。
・
・
・
「機人様だーいちゅき」ぎゅっ
ああああああああかわいいでちゅねええええええ!!!!
ヨーシヨシヨシヨシヨシ!!!!
(うわぁ……)
(ああん?!オッサンがカワイイもの好きで悪いか?!そういうのも差別だぞ!)
オッサンにだって隠れた趣味はある。
ちっちゃくてカワイイもんのイラストを描いたり、そういうグッズを集めるのが、心から好きなオッサンだって、世の中には存在する。
というか、世の中のカワイイもんを作っているのは、大半がオッサンだ。
つまりオッサンはカワイイものと深い関係にある!!!!
勘違いしてはいけないのは、オッサン自体は可愛くないことだ。
これをはき違えると、ツングースカ大爆発に匹敵する大災害が起きる。
セーラー服を着たオッサンは可愛くないのだ。
(まあともかく、作成完了しました。大体100体くらいになりましたかね)
(ヒャクゥゥゥ!!!????このちっちゃくてかわいいものがヒャッコォ?!)
(かわゆさの大量保有で、国連の査察受けちゃいますよぉぉぉ?!!!)
(Cis. キングチハによって、かなり工場内部がブチ壊されましたので……)
(ウッヒョー!)
(まあ、幸せそうなのでいいですか)
ちょこちょこ歩くキツネさんは、キングチハに興味を示している。
(キングチハに興味を持っているようですね。機人様、試しに彼らにキングチハの修理を指示してみてください)
(えぇー?ヌイグルミに直せるかなぁ?)
「……君たち、キングチハを修理してみてはもらえぬか?」
「「かしこまり~!」」
キツネさんがヌイグルミのような丸っこい手にハンマーをもってトンテンカンっと始めると、瞬く間に割れた砲や、外れたキャタピラが元通りになっていく。
なにこれこわい。
(正常に動作しているようですね。ちなみに修理素材は機人様のストレージと同化しています。彼らが何かを作る際は、機人様から調達しています)
(相変わらずのオーバーテクノロジーだな……原理は?)
(宇宙が始まった歴史の解説から始まりますよ?基礎の解説には6000時間、ぶっ続け飲まず食わずで続けて、250日間必要になりますがどうしますか)
(よし、理解は諦める)
(Cis.)
(要は、AIみたいな簡単な意思を持った工作機械と考えればいいんだろ?)
(はい、壁を作れと言えば、どういうものか?対話によって制作物を選択する、そういったカウンセリングの機能がついています)
(わーぉ)
しかし、本格的にポトポトが妖怪と妖精の住む、幻想郷みたいになってきたな。
内容的には大分メカメカしいんだけど。
「ッス、キングチハをなおすとは、新入りにしては、やりますねぇ……」
「……ロイ、彼らとはモノづくりを得意とする者同士、仲良くしてやってくれ、ひとまず彼らをポトポトに連れて帰るからな」
「ッス!」
俺たちはキュッキュッっと可愛らしい足音を立てるキツネさんたちと一緒に、ひとまず目本を後にすることにした。
彼らがいた状態で目本に居ると、色々ややこしいことになる。
流石にファーザーがこのキツネさんになったとは、夢にも思わないだろうが。
それにファーザーを物理的に排除してしまった後の立て直しは、俺の仕事じゃない。このあとは目本に存在する政府がしなくてはいけない仕事だ。
ファーザーが消えたとしても、未だにテンバイヤーは生き残っているし、ヤクザマンも存在したままだ。
特にヤクザマンは頭を押さえつけていたファーザーが居なくなったことで、さらなる暗躍を目論むだろう。
しかしもはや忍者の方が優勢だ、セカヘイを失った今、大勢は決まった。
後の事は彼らに任せればいい。
俺はセカヘイの本部に残っているポンダのニセ札を焼き払ったりの事後処理をした後、キングチハはニンジャたちに預けて、逃げるようにして目本を後にした。
彼らならこの超重戦車を、悪い目的には使わずに役立ててくれるだろう。
俺たちが目本にこのまま残ったままになると、色々と勘繰られてしまうからな。
とにかく、セカヘイをしばくという目的は達したのだ。
世界会議の事も含めて、やり残したことは多い。
ポトポトでの日々は、また忙しくなりそうだな……。
・
・
・
機人たちが目本を発ったその日の夜のことだった。
黒塗りの大型ヘリが、旧セカヘイ本部、つまりファーザーの工場の屋上へと向かっていた。そのヘリは識別灯もつけず、飛ぶ姿は不気味なほど静かだった。
『こちらアイアンハンド。ポイントに到達。屋上に戦闘の痕跡、残骸を発見。父は死亡。繰り返す、父は死亡。』
『
『
下部に設置してあった強力な電磁石にパワーを入れたヘリは、ガチリとファーザーの遺骸を持ち上げる。ヘリはそのままいずこかへ飛び去って行った。
飛び去るヘリの機体の側面には、一本の帯と白い星が書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます