第四章 目本篇

目本へ殴り込みじゃあ!

「機人様!積み込み完了いたしました!」


「……ご苦労だった、休んでよし」


「ハハッ!全隊、駆け足!」


 俺は積み込み作業を終えたエルフ達を見送った。

 ポトポトの壁の外に駐機されているビッグバードには、ニセ札の詰まったコンテナが大量に積み込まれた。


 これはセカヘイのファーザーとやらに、献金の名目で叩きつけるためのものだ。

 

 ファーザーに会うのが目的なので、あってしばき倒したら、このニセ札は焼くかしないといけないな。さすがにこれが流通したらイギニスの経済が大混乱になる。


 それか、ニセ札をばらまいているのはセカヘイだってことにして、ブッ叩いてもいいかもしれんな。


 でもそれをするには、まず前提として、目本の司法がマトモじゃないといけないので、これに関しては期待していない。


 前からある分に、刷り足した分もぶち込んだので、総額でいくらになったかは正確には解らん。たぶん、1兆ポンダくらいだとおもうけど。


 イギニスの数年分の国家予算をたたきつければ、さすがに顔を出すだろ。


「ケケケケ!ヒトブタはこんな紙切れのどこがいいんでげすかね?」


「……うむ、人は、エルフや我と違って、己が為せる以上のものを求める」


「……人の欲望は限りがない。そのためにこの、紙切れがあるのだ。わかるか?この紙は交換に使わねば、ただの紙でしかない」


「へぇ、このままじゃあ、風呂の焚きつけにくらいしかなりやせん!」


「……うむ。これは人と人が、これで交換に応じるという『信用』が無いと成り立たぬのだ。なので実際に取引しているのは、信用なのだ」


「へぇ、解るような解らん話でがすねぇ」


「……うむ、吹けば飛ぶような※胡乱うろんなものに血道をあげているという事だ」


※胡乱(うろん)確かでなく、怪しいこと。うさんくさいこと。


「ケケケ!こんな紙きれで済むならありがてえこってす!」


「よし、これから目本に飛び立つ。セイの話では、我の分霊が降りたつに適した平地があるそうだからな」


 これが意味する事。意外な事に目本はもう飛行機を実用化しているらしい。


 オーマやイギニスまで飛んできてるのは見たことないから、まだ航続距離はたいしたことないんだろう。実用間もないって感じかもしれないな。


 目本に向かうメンバーはミリア、デドリー、ロイ、そしてポルシュの4人だ。

 そして、リューとはイギニスで、シンシアとは目本で合流する。


 あ、忘れてた。もちろんセイも協力者として連れていく。


 イギニスのスパイマスターのシンシアは、既に現地でスパイ網と現地での隠れ蓑になる企業を構築しているのだ。


 なので我々はそれを頼って、拠点として活用し、目本で活動する段取りだ。


 俺たちの目的は、セカヘイによるポトポトを含む、世界への宗教・思想的な侵略を防ぐことだ。


 そして目本が国家として加担しているのであれば、容赦なく目本ごと叩き潰す。


 言葉による戦いで済むなら、もちろんそうするが、最終的に暴力に訴えてくるだろう。そうなれば圧倒的武力ですべてを解決する。これが俺の基本的スタンスだ。


 インダでイギニスの無敵艦隊と戦った際の教訓を踏まえ、今回ビッグバードには、攻撃型無人機の「ステップイーグル」君が2台、同乗している。


 クラフトメニューの資材はたぷんたぷんだし、兵力は恐らく申し分なし。

 目本に何が待ち受けて居ようと、対策はとれるはずだ。


「……よし、者どもいくぞ。いざ目本へ!!」


「「おーー!!」」


 ポトポトの妖怪たちが、目本という、この世の地獄へと飛び立った。

 さて、いったいそこで何がまきおこるのだろうか。

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