この世の地獄

「ここが……目本……?」


 目本に降り立った俺は、わが目を疑った。

 飛行場に並ぶ飛行機、そして目に入る外の建物。


 どう見ても俺の故郷の、昭和と呼ばれる時代と、全く一緒に見えた。


 丸っこいエンジンが先端に着き、三枚のプロペラを装備した飛行機。


 これは俺が子供のときに作っていたプラモデルの飛行機と、とてもデザインが似ている。違うのは翼の上に書かれているマーキングくらいだ。


「目本へようこそ、機人様」


 俺にそう声をかけたのは、セイだ。


 フッようやく帰ってきたぜ見たいな風を醸し出しているが、お前が詐欺師で、未亡人にキモい性的アプローチをかけていたのは、変わらんからな?


「何か、懐かしい感じのする国だな。目本という国は」


「ケケケ!腰にきましたね。セイ!飯と飲み物が出るとこまで案内しな!」


 ミリアのローキックがセイの尻に吸い込まれると、<パァン!>といい音がした。


 奴の「ニッポンポン!!」という妙な悲鳴の残響を伴い、俺たちは飛行場のすぐ外にある「便利店コンビニ」へと向かうことにした。


 そして店の前に着くと、セイがこの店がどういうものか、説明を始めた。


「オーマやイギニスでは、パンはパン屋、酒は酒屋で買いますね?」


「あったりめえでやんす、酒屋でパンが買えますか!」


<パァン!> 「ジャパンッ!」


「あいたた……目本にはこういった『便利店』があり、食べ物や飲み物、雑誌なんかの日用品や食料をすべて手に入れることができます」


「……なるほど、それは便利だ。ああ、だから『便利店』か」

「左様でございます」


 俺たちは『便利店』の扉をくぐった。

 しかし……


「……なんだ?ほとんどの棚が空っぽじゃないか?」


「どこが『便利店』ですか?!水と缶詰しかねえです!」


 あー、しかもこれ、昔ながらの缶切り必要な奴じゃん。

 どうしろっちゅうの?


「ああ、それはですね……」


 セイは便利店の前を通る道路、その道路を挟んだ先にあったものを指さした。

 そこにはカラフルなお菓子や、ジュースを並べた屋台があった。


「「さぁさぁ、よっといで見ておいで!!」」

「「100人限定だ!「バロンジュース」に、「おいしい棒」もあるよ!」」


「なんだ、あるじゃねぇでげすか!!ケケ!目本ってもたいしたことねえですね、ああいう屋台なら、イギニスやオーマにもありますよ」


 ……あっミリアさん、いっちゃった


 しかしあの屋台のオッサン、眉毛が繋がっていて角刈りで、どこかで見たような気が……あ、ミリアさんが何かにキレて屋台にケリ入れてる。

 もー!!!やめなさいって!!!


 俺は慌てて屋台のところへ走っていった。

 いきなりポトポト王が国際問題を起こすのはマズい。


「はぁ!?だーかーらー!これに30イェン!って書いてあるじゃねえですか!」


「わかってねえな嬢ちゃん、商品てのは、あるべき場所にあれば、その価値が増えるんだよ、100イェンでいらねえなら買えんな!ペッペ!」


「わかるかぁ?山の中のジュースと、街の中のジュースが、おなじ値段なわけねえだろ?おじさんは悪いことをしているわけじゃねえんだよ」


「まあ、自然のセツリってやつだ」


(あっ……まさか、『転売』しているのか?)


「しょうがねえですね、ほれ、1万ポンダ!両替めんどくせえからこのまま適当にもらっていきますよ!」


「へへ!毎度アリっと」


「ペッペッペ!なんですかこれ、腐ってるじゃないですか!!!」

「……店主、これはどういうことだ?」


「いやいや、便利店でもう腐ってたのかもしれねえぜ?」


 尻尾出しやがったこいつ!しかも悪びれもせず!


「あんですって?!!」

「……もうやめろミリア!」

「ですが機人さま!」


「落ち着け、この空を見ろ……」

「……?」


「思い出せ、このような日には、とんでもなくデカいフンをする、『バリバリ鳥』が出る。もう行こうではないか、ミリアはオーマでもソレをよく見たではないか」


「――ああ、さいですな、ケケケケ!!!巻き添えくったらたまらねえでゲス!」


(ナビ、空港に待機しているステップイーグルを一機、こちらに回せ)

(Cis.)

 へへ、儲かったぜ。目本に来る旅行者は、良いカモだからな。


 高い金出して、「誰でも金持ちになる方法」を買った甲斐があったってもんだぜ。


 便利店や大型店で、テンバイ=ギルドの仲間と一緒になって買い占め、売る。

 こんな簡単でもうかる商売に、なんで世の中のアホ共は気付かないのかねえ。

 

 へへ、これでアガリをテンバイ=ギルドに収めりゃ、ワシもそのうち……シルバーランクのテンバイヤー、ゆくゆくはアダマン級のテンバイヤーになって見せるぜ!!


 ワシの成り上がり伝説は、ここから始まる!!!


 ん?なんかでっけえ鳥が空にいるな?

 あんな鳥見るの始めてだ。ん-?プロペラがないから飛行機じゃねえよな?


 あ、何か落とした?


★★★


 数時間後、火災の通報によって現場に到着した消防隊は、何かの爆発したあとしか残っていない現場で、途方に暮れる事となった。


「一体何があったんだ……?これから戦争でも起きるってのか?」

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