目本の裏社会とのコンタクト

元神聖オーマ帝国の宰相にして、元ムンゴルの参謀だった、私ネコマは流れ流れて、今や目本のヤクザマン組織、「サバミソ組」の若頭となっていた。


 ヤクザマンとは何か?簡単に言えば、「ビジネスマン」だ。


 目本のビジネスマン=ヤクザマンは、この世に存在する、あらゆる品を取り扱うのだ。


 それは貴重であれば何でもよく、法律に引っかかるとかそんなことは気にしない。

 違法兵器ボー禁止薬物アヘアヘン希少動物パンダ人身売買ウキヨエアイドル、なんでもござれだ。


 目本は法体系がしっかりしているので、かえってこういった違法な物品には、高値が付くのだ。まさにジレンマというやつだな。


 今日は、ある「モノ」の取引の為、このイギニスの片田舎の漁港までやってきた。


 目本が誇る「重マグロ駆逐艦」に乗って、一般的で善良な漁師を装って、はるばる目本からイギニスまでやってきたのだ。


「ッケンナコラー!ッスゾコラー!」


 急な騒ぎが起きて、私はそちらに注意を向けた。


 ヤクザマンのビジネス会話は非常に難解だ。他国人からすれば、威圧しているようにしか見えないだろうが、これはヤクザマンの通常の挨拶だ。


「オキャクサッ、チッスウッス!」

(客が来たか?私が対応しよう)


「ッス……ッシャッス」

(はい、お願いします)


「ゲェッ!奴は……?!」


 砂色をした機械の体。あんな姿をした存在を、私は一つしか知らない。


 そう、「機人」だ。なぜかジャラジャラとした金のアクセサリーを身に着け、頭にはシールの付いたままの野球帽をかぶっている。


「HEY!あんたが「サバミソ」のボスかYO!」


 変装……のつもりなのだろうか。むむむ、機人の考えることはよくわからんな。

 しかし、機人は異国人……だよな?一応。オーマ風の喋りで良いんだろうか。


「そうだ。『ブツ』は持って来たか?」


★★★


 俺はふた昔くらい前のb系ファッションに身を包んで、目本のヤクザ組織との取引に臨んだ。


 ……ううむ、やから感を出した方が良いかと思ったが、今になって思えば、もともとからして、俺はヤベー見た目してるの忘れてた。


 うむ、無駄な買い物だったな。このb系アイテムはあとでミリアにでもあげよう。


 俺だとまったくこのファッションアイテムは使いこなせんが、彼女なら、イカ人間の出てくるゲームのキャラみたいになるだろ。


 さて、イギニスにはいくつものテンプラバーがある。


 それらはフィッシュ&チップスを提供する店に見えて、じつは目本の地下組織のフロント企業なのだ。


 俺はチャールスのエリクサーの顧客、そのツテを辿って、彼らまでたどり着いた。


 表向きは目本との、機械部品の取引だが、これには別の目的が有るのだ。


「……ああ、『ブツ』はここにある。」


 俺は持ってきた対湿コンテナの蓋を開ける。そこにぎっしりと詰まっていたもの。


 イギニスにある秘密の作業場で作られている「ポンダ」だ。


 このポンダを構成している紙、インク、全ては本物と同じだ。


 しかし、一つだけ欠けているものがある。それは、この「ポンダ」が、一体誰の手から、どこへと渡ってきたか?というストーリーだ。


 さあ困った。本物と変わらないが、このポンダを俺が使えば、たちまちにアシがつく。怖い怖い税務調査官が押し寄せてきて、あっという間にバレる。


 なので、実際に使うのは他人に任せるのだ。ニセポンダを使うリスク、そんなものは他人に押し付けるに限る。


 俺が売りつけたポンダは、2:3の交換レートで本物と交換される。これは表向きは、目本との機械部品の取引で得られた正式なものだ。


 これにはイギニスの政府はケチのつけようが無い。


 そしてこれでようやく、ニセポンダは、本物のポンダとなれる。


 俺が必要とするのは資金洗浄。先方はリスクを取ってでも、資金力の底上げがしたい。と言ったわけで取引の合意に至ったのだ。


 きれいなピン札のニセポンダ。


 恐らく、目本の金持ち観光客や、リゾート客が使うのだろうな。


 大抵の人間は、外国の紙幣なんかよくわからないだろう。それに金持ち観光客は、キレイな高額ポンダ紙幣を使ってもおかしくない存在なので、押し付けるには最適の存在だ。


 取引が終わり、ポンダの詰まったコンテナが、クレーンでもって目本の「重マグロ駆逐艦」に運び入れられるのを俺は見上げていた。


 ……しかし重マグロ駆逐艦って何だよ?!マグロと駆逐艦、どっちが重いのかわからんだろ!なんだその名前の付けかた!


 ま、まあ、名前はともかく、目本も立派な海洋国家みたいだな。


 イギニスの蒸気船よりも立派な船だ。イギニスの船は、木と鉄が入り混じっていた。しかし、目本のこのフネは、全てが鋼鉄で出来た駆逐艦だ。


 連装砲とか機関砲がついているし、見た感じ第二次大戦くらいの技術でつくられているとみて良いな。


 目本はなんか所々が親近感あるし、シンジケートが存在するということは、逆説的に法体系がしっかりしているということでもある。


 蛮族国家にこんな船は作れないからな。機会があったら、目本の政府とコンタクトを取ってみたいところだな。


 すべてのコンテナが積み終わり、出向する重マグロ駆逐艦。


 そして、商売の結果を俺は手にした。総額4億ポンダ。


 あのシンジケート、やべえくらい金持ってんな。


 ともあれ、これでようやく、最終フェーズの準備に進めるな。


 お金があれば何でも買える、そう、兵士も新聞も、政府すら。

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