機人、工場長になる。

 チャールスに紙きれを押し付け、大量の現金を手に入れた俺。


 現金を手に入れはしたが、やった事は、紙と紙の交換だ。

 これだけではまだ何にもならない。


 なので、紙以外のモノに交換することにした。


 俺の目の前には、もうもうと煙を吐き出す煙突の付いた建物がある。

 そう、機人、工場長になりました!!


 工場を作るゲームはあんまやったことがないが、ベルトコンベアの上を製品が動くさまを眺めるのはなかなかいいものだ。


 俺が買った工場は、産業用の小型の蒸気機関を作る工場だ。

 エレベーターとか、ポンプとか、そういうのに使う蒸気機関だな。


 俺は作業場から、併設されている設計事務所に行く。

 そこでは、ローニィ一家でひとりイギニスに来た、ロイが作業をしていた。


「ッス!イギニスの先端技術はエグいっすね!!」


「……ドワーフでも理解は難しいか?」


「ッス!でもすぐにモノにして見せるっす!」


 ガリガリガリッっと製図台に向かってロイが書いているのは、設計図だ。


 エイブラムスを今の技術で作るのは難しい。ではどうするか?

 現状使える技術で、エイブラムスのコンセプトを読み取って実装する。


 それが今書きあげられている設計図だ。


 ――なるほど。


 俺の目の前にある10数枚のスケッチ。

 それは装甲化された蒸気自動車に、連発銃が据え付けられたものだ。


 俺の時代では、「装甲車」といわれていたもの。

 それが今、この世界で蘇ろうとしている。


「……この光景をポルシュが見たら卒倒しそうだな。彼も呼ぶか?」


「ぜひお願いするッス!あいつのアイデアはぶっ飛んでるから、ウチの助手に欲しいッス!!」


「わかった。」


 ポルシュはぶっ飛んでるからなー。


 需要があるところのアイデアまでは誰でも思いつく。

 彼の場合、まだ需要が無い所に、まるで未来予知のようにして、アイデアを吐き出してくる。彼こそが天才だと、俺は思う。


 彼が居れば、装甲車の建造は思ったよりも速いペースで終わるかもしれないな。


 設計が終われば、シャーシや車体の工場も必要だ。

 金ならチャールスの銀行にいくらでもある。それも買うとしよう。


 俺は工場の窓の外にある建物に視線をやった。

 目に入ったのは小さな郵便局のような建物。


 あれは「機人銀行」だ。

 この工場で働く者の給金を取り扱っている、小さな銀行だ。


 いってみれば、この工場に、「金」という血液を注入している、心臓だ。


 機人銀行と、蒸気機関を作る工場を中心とした、この小さな世界。


 だが、この小さな世界が、のちのちイギニスに波乱を巻き起こすのだ。

 必要最低限の仕込みはこれで終わった。


 あとは……暗躍あんやくの時間だな。


 こいつばっかりは、ミリアやデドリー、ロイを巻き込むわけにはいかない。


 いや、こんな楽しい事、他人に任せるわけにはいかないよなぁ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る