聞き取り調査

「……それで、詳しい話を聞かせてもらってもいいか?」


 俺たちは象人たちに、話を聞くことにした。

 聞きたいのは、古代竜がイギニスを襲うまでに、何があったかだ。


 イギニス人に聞いても、あの様子ではマトモな内容が返ってくるとは思えん。


 もちろん、象人は被害者だから、内容を多少盛るだろう。

 だが、チャールスに聞くよりは、ずっとマシだ。


 俺たちは手分けして象人たちに話を聞く。

 ミリアさんやデドリーを野放しにするのはちょっと不安だが、まあ大丈夫だろう。


「君たちの出身地はインダと聞いた。そこで何があった?」


「へぇ、おいどんらはインダで、普通に暮らしてたでごわす」


「……うむ。チャールスは、君たちが毎日必要な分働いて、暮らしていた。そう言っていたな?」


「そうでごわっど。バナーナや魚、それをその日の分、必要なだけ獲るでごわす」


「でもイギニス人が、明日のぶんも獲ったらいい、そうしたら明日は休める。そう教えてくれたでごわす」


「……ふむ?」


 うん?そんな変なことは言ってないな?


「そうしたら次は、村のぶんを、ひとりで獲れるようにすれば、他の象人は休める。そういってでっかい船を貸してくれたでごわっど」


 ふむ、まあまあまあ、いいとしよう。


「したら、手の空いた象人はどうすればいいでごわすか?そう聞いたら、イギニス人が、草の世話の仕事を紹介してくれたでごわっど。」


――おやおや?段々怪しくなってきたぞ?


「それで、草と交換に、イギニス人がくれるポンダで、次第においどんらは、イギニスからモノを買って、使うようになったでごわす」


「……なるほど、ポンダのような『お金』は、君たちは持ってなかったのだな?」


「ごわっど。別に無くても、なんとかなったでごわっど。」


「でも、皆が忙しくなってくると、そうもいかなくなってきたでごわっど……」


「魚はでっかい船が全部持って行ってしまうし、草ばっかりで、バナーナの生えているところはずいぶん少なくなったでごわっど。」


(あーーーーー。これは完全にやられてますね)

(どういうこと?ナビさん)


(つまり、土地の力によって養えていた人口を、アヘアヘンの材料の栽培の促進や、魚の乱獲をはじめとする環境破壊で、台無しにしたという事です)


(マジ?イギニスってそこまですんの?)


(マジのマジです。とはいえ、大分大人しい方です。よかったですね。人類の倫理はコンマ2ミリほど、前回の文明より進化してますよ)


 それ、ぜってぇ褒めてねえだろ。


「象人の数も前より増えて、食っていけなくなったでごわす。だからチャールスさんの工場に、おいどんらは来たでごわっど」


「古代竜様の教え、それを守らなかったのが、間違いの始まりにごわす!」


「「ごわっど!ごわっど!」」


「……まて、古代竜は、君たちと会話できるのか?」


「ごわっど。古代竜様は、おらたちにバナーナの育て方と、魚の取り方を教えてくれて、毎日必要な分だけ獲るよう、言いつけたでごわす」


 おいおい……、古代竜が理知的すぎないか?それだとだいぶ話が変わってくるぞ?


「教えを破った罰にごわす!そのために、自分が着るわけでもない服、それを毎日作る羽目にはなったでごわす!」


「……おいおい落ち着け、相分かった、チャールスには私から労働時間を減らすように言う。それでひとまずは落ち着いてくれ」


「仕事が無くなれば、君たちも食うのに困るのだろう?」


「「ごわっど!ごわっど!」」


 さて、これは厄介だぞ。しかし新しい、重要な情報が手に入った。


 おそらく、古代竜は象人の守護者だ。


 しかしだ、俺はイギニスとポトポトの友好のためにここにきている。

 その取引には古代竜の討伐が条件になっている。


 俺の立場上、象人や古代竜を助けることはできない。


 しかしこのまま古代竜を討伐すれば、イギニスは象人やインダをしゃぶり尽くすだろう。しかもその引き金を引いたのは俺。それは非常に夢見が悪い。


(ナビ様、この状況を解決する、素晴らしいアイデア、ありませんか?)


(えぇ、無いこともありませんが?)


(ほう!どんな方法が!)


(彼らの言う、文明的な方法をそのまま使います。欲しいなら与えてやれ、です。)

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