自然史博物館

「ンッンー!!ここがイギニスが誇る自然史博物館ですぞ!」


「……ほうたいしたものだ。」


 チャールスが自慢するだけあって、この博物館はすごい。


 世界各国から集めた植物や、動物、鉱物の標本があるらしい。


 ってことはだ……!


(ナビ、標本からバッテリーの材料をお気に入り登録したいんだけど、できる?)


(できますよ。実物があるならそれはもう問題なく)


 ヤッター!!

 これで電池切れの危険は、大分遠のいたんじゃないの?


(機人様。一応伝えておきますが、MK3以降の核融合バッテリーは、自然界に存在しないものをバリバリに使っていますので、かなり期待薄ですよ。)


(あら、そうなのね)


(ただ……地上をひっくり返して再資源化したときに、上手いことでっけぇ結晶ができた可能性もあります。なので宝くじみたいなものと思ってくれれば)


(うーん、そこはもうちょっとうまいことしてほしかったなあ)


 うろうろと館内を回ってみるが、流石に都合よくそんなものはなかった。


 当てが外れたな。


 古代竜との戦いで、ブーストをふかしまくったので、今の電池残量は90%だ。

 さすがの俺も、そろそろやべえかなと思い始めている。


 夏休み二週目に入ったけど、まだ宿題帳を開いてすらいない。

 そんな感じの焦りを感じている。


「ンッンー!この鉱物エリアの次は、動物エリアになっておりまして、ただいま、特別展示も行われておりますよ!ンッンー!」


 そして、俺は、ここでとんでもないものを見た。


 柵の中でトンテンカンと鍛冶をしているのはローニィ一家のロイだ。

 あれ?自動車に乗ってないと思ったら、なぜこんなところに?


「……お前は、何をやっているのだ?」


「ッス!なんかいつの間にかここに居たっす!」


「ンッンー!どうやら誰かが、ドワーフのロイ女史を、イギニスへの贈り物と勘違いしたようですな!」


「ン!ここ亜人動物園では、こうして亜人種を展示しております。ええ、あの?」


 俺はひとまず柵をぶち壊して、ロイを自由にすることにした。


 ――亜人動物園て。さすがに胸糞が悪すぎる。


「……ちなみに、どういった目的で亜人を檻に閉じ込めている?」


 なるほど見れば、キツネ、ゾウの亜人も、檻に入れられているな。


 あるいはただ肌が黒いだけといった、見た目が違うだけで、檻に入れられているようなものまで居る。あ、奥にオーマやムンゴルっぽい人もいる。


 ……イギニスなにしてんの?人間動物園?


「ンッンー!つまりその……ヒトの文化的な進化の証拠を示すことにあります!未開の状態から、文明に至るまでの展示です!」


(ははぁなるほど、イギニス人は、自分たちを進化の頂点、もしくは近いものとみなし、社会進化論をとっているわけですね)


(ナビさん、俺には難しい。もっと簡単に言って?)


(Cis. つまりです、イギニス人はオーマやムンゴルの社会を「遅れた」または、「劣った」社会として見なしています。)


(それは何故か?彼らは、人類が皆、自分たちのように同じ発展の道をたどる。そう夢想しているようですね)


 まあ、意味は解る。


 文明を発展させるのが目的のシミュレーションゲームでは、マスケット兵と戦車が衝突するような、そりゃ明らかな優劣がつくことはある。


 でもそりゃ大体、立地とか環境とか、その場の運によるものが大きい。


 人という種族に根本的な優劣があるとは思えない。


 俺だって下手な立地にいれば、戦車で轢かれるほうの立場になるのはザラにある。


 あ、それでもマルチプレイの時はギブはしないけどね。相手に失礼だから。


 ちょっとイギニス人、調子に乗り過ぎているな。


 これはオーマよりきついお仕置きが必要かもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る