古代竜との戦い

 蒸気船から「機人いきまーす!」とばかりに打ち上がった俺。

 船に炎の息を吐きかけた、古代竜の背中を追いかける。


「飛行モードに変形します」


 ナビがそういうと、大きく広がった背中のウィングと体が変形して、まるで三角翼の戦闘機のような形になる。

 すげぇ!俺ってこんなことも出来たの!


 ぐんっと加速して、古代竜を視認できるまで近寄る。


 奴の体はまるで全身鎧といった具合だ。硬質の甲殻が、しなやかに動いている。

 そして、速い。飛び上がったばかりで、まだ加速が不十分とはいえ、俺と同じくらいの速度で飛んでいる。奴は本当に生物か? 


 牽制にミニガンの射撃を加えるが、遠すぎる。

 甲冑を着た人間を引き裂く弾丸も、やつの体に弾かれている。


 これはイギニスの連中が苦労するわけだ。

 第二次大戦くらいの技術でも、歯が立たないんじゃないか?


 ならばそれ以上の技術を叩きこんでやろう。

 マルチミサイルを食わらしてやる。

 こいつは文字通り、対地、対空、あらゆる状況に適合したミサイルだ。


 おれは肩のコンテナから、2発のミサイルを発射した。

 ミサイルは、空を飛んでいる俺よりも、ずっと速い。

 瞬く間に古代竜に追いつくが――


 古代竜はまるで蛇のようにぐるりと体をよじって、「避けた」。

 マルチミサイルは急な方向転換には対応できない。目標を見失って自爆した。


 ――まさかこいつ、ミサイルがどういうものか、知っているのか!?


「翼による空力制御では、追いきれませんね。サイドスラスター付きの、直角に追尾できるミサイルが必要でしたね」


「あの古代竜、ミサイルを知っているんじゃないか?」


「可能性はありますね。ドラゴンは第1フェーズにおいて、世界を破壊し尽くすのに利用された生物です。おそらくミサイルとの交戦経験があるのでしょう」


 何してんだよ人類!アホか?!いやアホだったわ!!

 アホじゃなかったら滅んでなかったわ!!!


 そしてそのまま飛ぶ俺の下を、落下の速度を加えて加速していく。

 まずい、目的は蒸気船か!


「蒸気船を空母と認識しているのでしょうか?なるほど、興味深い」


「言っとる場合か!」


「飛行制御をいただいても?正直あなたの操作では、追いつける気がしません」


「言ってくれるな!でも、任しちゃう!!」


 ガクンと視界が揺れたあと、俺の体は古代竜を一目散に追いかけた。

 おかげで俺は攻撃に集中できる。ナビさまさまだな。


 ナビによって身体を傾けて逆さまにされたあと、機首下げをして、真後ろに方向転換した。丁度下向きUターンって感じだ。


 高度を下げた分、落下のエネルギーも加わって、俺は更に加速している。

 半面、古代竜はミサイルをよけるために、空中を蹴ったので、速度を失っている。


 これなら捉えられる!

 俺はドワーフ要塞で手に入れたばかりの「オートキャノン」を撃発する。


 37㎜の徹甲榴弾は、軽い放物線を描いて飛んでいき、古代竜の黒い背中、首筋に吸い込まれて、甲殻を穿って爆発した。


「――やったか!?」


「それはフラグです。来ますよ」


 体を捻って後ろを向いた古代竜は、俺に向かって火球を吹きだした。

 火球は俺の近くまで飛んでくると、炎をまき散らすように、派手に爆発した。

 ――うぉ!あぶねっ!!


 これは奴が俺の攻撃をとめるための、牽制のようだった。

 身をかわした俺に対して、翼をはためかせ、真っ直ぐに突っ込んでくる!

 うぉぉぉぉ?!体当たりする気か!?


 「飛行モードから格闘戦闘モードに変形。光刃ブレードを展開します」


 ナビによって、飛行機のような姿から、いつもの俺の姿にかわる。


 ミニガンがリストバンドについている手。

 そちらに、いつのまにかライトセイバーが握られている。


 ブォン!っと空気を焼く音がすると、いつもは棒状だった青い光刃が、幅広い刀身になる。根元から剣先にかけて、少し細くなっていて、ブロードソードみたいだ。


「うぉぉ!ナビちゃん最高!愛してる!」


「Cis. ですが、恋愛感情を押し付けないでくれますか?可哀想なのでお世話しているだけなので。」


「「ガァァァッ!」」


 俺たちに真っ直ぐ迫ってくる、漆黒のオオトカゲ。

 機械の体と心じゃなかったら、間違いなくチビってるわ。


 振り下ろされた右手を、ブレードで切り落とす。

 丸太くらいある腕は、血しぶきひとつあげずにそのまま落ちていった。

 

 偶然落下地点は、ちょうど蒸気船の上になり、ゴロゴロと転がって甲板の上のモノを薙ぎ倒していった。


 ヤケクソでかかってくる、と思いきや、古代竜は身を翻し、翼をバッと海面に打ち付けるように広げて、真っ直ぐどこかへ去っていった。


 あっッと思ったが、格闘モードのままの俺は、このままでは追跡できない。

 それに、飛行モードに変形して追いかけるしても、蒸気船とはぐれてしまうしな。


「――逃げられた、か」


「古代竜というだけあって、自身の命に関しては、慎重な性格のようですね。」


 ナビがいてよかった。俺一人では蒸気船を守れたかどうか……。

 まあ、ひとまず蒸気船に戻らないと!まだ燃えてるし!


 しかし古代竜は、おれの予想していたよりも、ずっと手ごわい相手だったな。

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