そこにはオレがいた。

「……この部屋に入るのは私だけでいい」


 理由はあれだ、放射線マーク。

 むしろ要塞の外に出て行ってもらった方が良いかもくらいだ。


 エルフ達に放射線障害がでたら、大変なことになる。

 あのエリクサー的な謎注射なら治せる可能性はあるけど、自信が無いわ。


「へぇぇぇ!機人様の御意のままに」

「へ?いいんッスか?」<パァン!>「イテぇ!!」

「機人様が良いっつったらいいんだよ、あぁ?」


「……この部屋は、目に見えぬ毒が漂っているかもしれん。皆の安全のためだ」

「この毒は目には見えぬが、定命の者の肉と骨を蝕む。だから――」


 振り返ったら、もう誰もいないでやんの。

 ねえ、オッサン泣いていい?


 まあ、いいや。言い出しっぺはオッサンだもの。

 でも涙が出ちゃう。


 さて、基地の内部には大量の車両があるが、どれもサビサビで使い物にはなりそうにない。どれくらい放置されてたのやら。


 だが、車両の中には電子部品などの、この時代では貴重な物があるだろう。

 これ自体が使い物にならなくても、俺を通せば大丈夫だ。


 あっそうだ。UIで放射線量とか見れないのかな?

 こういう時は初心に帰って、と。


「周囲の放射線量を監視する。」――どうだ?ヌッ!なにか左上に表示された。


『0.05SV/h』……高いのか低いのか、まったくわからん。

 うーむしまった、リアル知識が無いのがここで響いてくるな。


 ナビAIとかほしいな。

 ちょっとハスキーな感じの女の子の声で解説してくれるとすごい良いんだけど。


 ま、汚染されてるっぽいのが解るだけでも上等だ。


 さっそく中を調べるとしよう。

 なにか俺の出自に関して解ることでもあると嬉しいんだけどなー。


 小一時間うろうろして中を調べてみた。

 どうやらここは、国連の兵器保管庫だったようだ。


 車両の他には、倉庫にあったコンテナの中には鉄砲やら弾薬がぎっちり。

 スーパーなミュータントにこれが見つからなかったのが心底有難い。


 この箱、ちょっと汚染されてるっぽいけど洗えば何とかなるか?

 ひとまず2箱、入り口まで持って行った。


 開発者があいつらに高すぎる知能を与えなかったのは、マジでファインプレーだったと思う。これを握られてたらちょっとヤバかった。

 

 そしてさらに奥に進んで、そこにあったモノ。

 もしかしたらあるかも?と思ったが。まさか本当にあるとは思わなかった。


 ロボットゲーで見る様な、未来の倉庫感がある、ハンガーの中。


 そこにはオレがいた。

 正確には、俺の同型機だが。


 装甲板は俺の砂色とは対照的な灰色と水色の水上迷彩。これはこれでお洒落だな。


 何か翼とブースターの付いた拡張ユニットみたいなのを、まるで着込むようにしているが、本体の方はすっかり壊れている。


 拡張ユニット、多分これは飛行ユニットだな。俺はブースターでとべるが、長時間飛び続けられるわけではない。無人機みたいに飛ぶには、この装備を使うのだろう。


 死んだ同型機を調べてみよう。おまえ、何か使えるパーツを持ってない?


『MK6核融合バッテリー』おっ、駄目だ。完全に死んでる。

 俺のUIに表示されている、電池の残量は0%だ。


 念のために食ってみる。すると、電池用の資材のカウントが上がった。

 それも10%も!


 期待は外れていたが、まあまあ上等な結果だ。


 こいつの武装を改めてみるか。


 ……。大体俺と似通ってるが、長砲身が目立つパーツがあるな?


 ほう、こいつの腕についている長砲身の武器は、『MK2オートキャノン』というのか。こいつは良さそうだ。サブマシンガンと交換しよう。


 ガシャコンと音をさせ交換する。

 いきなり腕のパーツ重量が増えたから、ちょっと感覚が狂うな。


 弾は37㎜徹甲榴弾と、いいねいいね!

 そういや、古代竜と戦うんなら、この飛行ユニットもらってった方が良いじゃん。


 絶対、空中戦になるでしょ。


 俺の兄弟には、もう必要のないものだ。

 彼を食って、彼の代わりに、この飛行ユニットを使うことにしよう。


 兄弟をモリモリ砕いてて思ったが、俺もなんか、オーマの連中と似たようなことをしているな……。あんま人のことは言えん。


 で、これ、一体どうやってくっ付ければいいんだろう……?


 うーん、兄弟と同じように、飛行ユニットの前に立ってみるか?


 ……何も起きない。えーっと、「飛行ユニットを装着する」これでどうだ?



 おおおおおおお!キタキタ、キタァ!


 カシャカシャ!っとユニットが動き出し、俺の背中、腹に接合される。

 合体してる!あなたとひとつになってるのぉ! 


 『了解。飛行ユニットを装着。ナビの人格マトリクスを有効化しますか?』


 ――そんなのきまっているだろう、もちろん、イエスだ!


 ああ、どんなのかな?ハスキーな軍人タイプの女性でもいいし、妖精みたいなタイプでもいい。完全無機質でたまにちょっとデレるタイプでもいい。


 さあ!どんなのが来る???!


 飛行ユニットから聞こえてきた、AIの声。

 それは少しハスキーな、中性的な雰囲気のする声だった。



「こんにちわ、ぼくトブえもん」


 ――俺はそっとナビをオフにした。

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