ドワーフ要塞

「ヤッター!アソボウ!」

「ゴチソウダー!」


 ドワーフの要塞の中は、武装したミュータント共で溢れかえっていた。

 明らかにサイズの合ってない、鎧や、鋼鉄で盾を鎧代わりに着た連中が、津波のように押し寄せる。


 こいつら、飯はどうしてるんだろう?

 いや、そんなことを考えても仕方がないか。


 きっと皮膚が緑だから、草みたいに、光合成とかしてるのかもしれない。

 だとすると、増えるのもキノコみたいにそこら辺から生えてるのか?

 うへー。


「オレハー!最強ダーァ!!」


「そいつぁようござんしたね……!」<DOMDOMDOM!!>

「ふふ…いきり立っちゃって、どうなっちゃうのかしらぁ♡」<ドピュドピュン!>


 ダドリーのファンネルから発射される光弾はともかく、ミリアのオートショットガンから吐き出される鉛玉。こいつはエグいな。


 鉄をも切り裂く烈風。自称最強なスーパーなミュータントは、イタリアン料理に掛けられるソースみたいな赤と緑の混じる液体になる。


 おおエグいエグい。


「ヒャッハー!逃げるやつは悪党ッス!逃げないやつはもっと悪党ッス!!」


 俺の作った武器ではないが、ドワーフ達も負けてはいない。

 どこんどこんと音をさせて、ミュータントをばたばた薙ぎ倒しているのは、ドワーフ製の連発大砲だ。


 台車に乗っているのは軽量砲。だが1門ではない。合計36門の小さな砲が、放射状に並んでいる。それがぐるぐると回って、ブドウ弾という、ゴルフボールくらいの鉛玉を6つ吐き出すのだ。


 いやあこれもしっかりエグい。

 弾がでかい分、ミリアのショットガンよりも、こっちの方が血しぶきが派手で、何かの規制がかかりそうだ。


「スーッスッスッス!ざまーみろッス!」


 あっロイさんは、そういう笑い方なんだ。

 なんでこうも、ポトポトの連中は笑い方が独特なんだ。スッスッスて。

 まあ区別しやすくて良いが。


 しかし俺もそろそろ、銃を取り替えたいな。

 性能が不足しているという気はしない。

 しないのだが、流石にこう、ワンパターンで飽きる。


 ああいう小口径の大砲を見ると、ドンドンッってぶっ放すタイプのも欲しいな。


 ひとしきりスーパーなミュータントのお代わりがきれるまで、ひたすらに打ち続けたのだが、大理石と真鍮で飾られたドワーフの大広間が、なんかもう緑と赤色の死体で、えらいことになってしまった。


 床が埋め尽くされるっていうか、それが積みあがるとはちょっと想像しなかった。

 死体の山は、俺の身長を超えるぐらいになっている。


 連中最後のほうは、こっちに、ほふく前進で這ってきたからな。

 恐怖がマヒしてるにしても、さすがにおバカすぎるだろ!


 こりゃー後片づけが大変だな。ポルシュの用意した荷台のひとつ、それを空にしてスコップ代わりにして死体を運び出す。


 食うのも意外と時間がかかるので、それは後回しにする。

 うーん、とても嫌な雪かきだ。


 ぐっちょ!ずっちゃ!ぶっちょ!ぶっちょ!といった感じに掘り起こす。


 こんだけ死を恐れないっていうか、おバカ中のおバカなら、さぞかしこの世界を作り出したであろう戦争では、大活躍したことだろう。


 生き残ってるやつがいたら、なんか話が聞けるかもしれないが、ここまでおバカだとちょっと期待できないな。絶対死んでるわ。


 ようやく道ができて、俺たちは進めるようになった。

 これだけの連中を収納していたダンジョンなら、結構でかいだろうし、なんか面白いものが見つかるかもしれない。


 期待に胸を膨らませて前に進む。胸ないけど。


 ではこのまま、要塞の中にあるというダンジョンまで行って、中を漁ろう。

 やばいのが居たら、適宜ブチ転がすっていう感じで。


「……ロイよ、当時のドワーフ王が開け放った、そのダンジョンまで案内せよ」


「ッス!」


 そして、ロイに案内されたダンジョンの入り口。

 開け放たれた先に並ぶ、大砲や機関銃の付いた車両。


 そして床に転がっているブチ壊れた扉。

 ミュータントに踏み荒らされて判読が困難だが、何か書かれている。


 恐らく、俺以外は読めないであろう、扉の横のエンブレムと文字列。

 地球に月桂樹のついた白いマーク、そしてUnited.Nationの白文字。

 

 そして大変にアトミックなものを表す、黄色い看板。

 どーみても、完全に国連の軍事基地です。ありがとうございました。

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