白髭山脈

 神聖オーマ帝国の首都、ペルリンでの出来事の後、俺は次にドワーフ達の問題、これを解決することにした。


 オーマは大丈夫だろう。機人に対する態度は大分前向きになった。

 経済的な面では不安が残るが、時間が解決する。


 で、イギニスの方はというと、まだしばらくかかりそうなので、別の懸案事項を片付ける。


 チャールスのやつ、「ンッンー!機人様に失礼のないお出迎えの用意を!」とか言っていたが、どう考えてもただの時間稼ぎだ。


 ……本国が古代竜に滅ぼされたとかなったら、どうするつもりなんだろうな?

 まっ、それはイギニスの問題だからいいや。


 さて、俺の目の前にあるのは、ドワーフたちの故郷、白髭山脈だ。


 ライノ川を北上し、花ひとつ生えていない、殺風景な「悪党平原」を超えた先、「騎士殺しの谷」をまたぐ橋を渡って、ようやく到着した。

 

 ちなみに、ライノから先の地名は、ドワーフの付けたものらしい。

 彼らのネーミングセンスは独特だな。ファンタジーっぽくて嫌いじゃない。


「……ここがお前たち、ドワーフの故郷か?」


「ッス!久しぶりに帰ってきたッス!」


 俺はドワーフ達の故郷だという、白髭山脈を見上げる。

 そこにあったのは、万年雪を被った、雄大な山岳のパノラマ。

 なんか天然水のCMにでも出てきそうな、そんな光景だ。


「白いのがぶっかけられて、ふふ、まるでクリームパイみたい」

 言い方ァ!

 デドリーは安定のアレだな。


「っかし、山の他には、何もねえトコですね」


「……うむ、ムンゴルは何を思って、ここを攻めたのやら」


 今回、白髭山脈にアタックするメンバーは、案内役のドワーフのロイ、ミリアとデドリー、そして俺だ。資材などの後援はポルシュになる。


 目的は白髭山脈にあるという、ドワーフが住んでいた要塞の攻略が目的だ。


 ムンゴルが悪党平原でドワーフ達を打ち破った後、白髭要塞は陥落。

 そして、連中による略奪を受けることとなった。


 しかし、ここである出来事が起きる。


 当時のドワーフ王は宝物殿を固く閉ざし、要塞にあったダンジョンの扉を開いた。

 そして、要塞の中をモンスターで満たしたのだ。


 ドワーフ達は散り散りになり、ムンゴルも略奪をあきらめて去っていった。

 そして残されたのは、ダンジョン化したドワーフの要塞、というわけだ。


 すばらしい。すばらしいぞ!まさにファンタズィー!!!!

 おっさんはこういう、ちょっと歴史を感じる系の設定、大ちゅき!


 といってもこれはゲームの設定ではなく、ドワーフ達のガチの歴史であり、あまり茶化したりできるものではないが。


 ドワーフのロイの案内で、要塞の入り口まで行く。

 すると、開け放たれた入り口には、ポトポトの訓練場の地下ダンジョンでもみた、あの、スーパーなミュータントたちが見張りをしていた。


 おいおい、あの連中、ここにもいるのかよ!

 しかし様子がちょっと違うな。ポトポト地下の連中は、ほぼ全裸だった。


 しかしここにいる連中は、違った。

 ドワーフが作った武器防具だろうか、ほかにもガラクタなんかを体につけている。


 武装は斧や長刀に加えて、背中に何本もの投げ槍をもっていたり、クロスボウを構えている奴もいる。遠距離武器を使う知性があるのか。


 かなりの重武装だ。スーパーなミュータントTHEマスターってかんじだ。


「……ポトポトの奴らよりも、重武装だな」


「きっと、ドワーフの残していったものを利用しているのですね」


「ッス!うちらの作ったもんをあんな使い方、許せねえッス!」


「……まずは、入り口の安全を確保するとするか。」


 俺は仲間から離れると、バーニアを噴かせて、猛烈な速さで連中に接近する。

 そしてそのままハイスピード戦闘へと移行する。


 激しく動く中、おれの反応は機械なだけにクリアだ。

 検出された個体数は20。その全てをロックオンして、射撃を加える。


 アーマードでコアなロボットゲーだと、妖怪みたいなコントローラーの持ち方をしないとできなかった、変態機動での戦闘。


 しかし、自分が機械の体ともなると、かなり感覚的に行える。


 左右に飛び跳ねながら、高低差もつけてスタイリッシュに仕留めていく。

 連なる銃弾がマーカーの中心に吸い込まれると、ミュータントは赤い血しぶきと鉄片をまき散らし、ひし形をしたマーカーが、その数を減らしていく


 中世レベルの遠距離武器相手に、ここまでする必要はぶっちゃけないだろう。

 だが、これは俺の「慣らし」も兼ねている。


 瞬く間に、中世型装備のスーパーなミュータントたちは全滅した。


うーん、「心置きなく暴力をふるえる相手がいるのは、いいものゾイ」と、どこかのペンギンの形をした悪の親玉が言いそうなセリフが頭に浮かぶ。


 さて、内部はどうなってるかな?

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