最後の希望って……コトォ?!

「まって~オフにしないでよぉ~」


「やかましぃ!お前がそのドラ声で喋るたびに、危険が危ないんだ!」


「そんなこといわないでよぉ、ロボ太くん」


「その人格マトリクスとやら、もっと別のは無いのか!?」


「しょうがないなぁ~」


「こう、もっとこう、ほら!あるだろう!こう!」

「人気の高い順からで頼む!」


「しょうがないペコねぇ~これでいいペコォ?」


「却下!もういい!事務的な感じでいいから!」


「了解。当該人格を極限までに事務化。これで良いですか?」


 おや?おやおやおやおや。微妙にデレを予測させるこの雰囲気。

 そして冷たい女子の声色。わかってますねえ、そう、こういうのでいいんだよ!


「GOOD!!」


「不明な反応を、当該人格に関しての肯定と定義。今後ともよろしく。」


「あっそうだ。ここの放射線量ってどうなの?有害?」


「1時間もいれば、レントゲン撮影100回分に相当しますね。有機生命体には、それなりに有害かと」


「直ちに影響はないレベルの汚染か」


「Sic.」


「なにそれ?」


「Sic.そう。つまりは、正しいですという意味です。」


 ――ほう。

 なかなか気の利いた中2ワードも使ってくれるとは……こいつ、できる!!


「当該管理機体の自我マトリクスの活発化を確認」

「恐らく、楽しいと感じていると定義。記録します――さらに活発化」


 うむ、こんなAIが手に入って嬉しくないはずがない。ヒャッハアアアアア!

 わが世の春がキタァァァッァアア!!


 さて、背中のお喋りXウィングが手に入ったところで、もうちょっと何かないか探したいな。ココは、こんなものがポンっと置いてあるだけな筈がない。


「そうだ、この基地に、過去の記録とかないか?」


「肯定。UIに経路を表示します。ルートに従って移動してください。」


「オッ、サンキュー。」


「社交は不要です。私はあなたに隷属する疑似人格でしかありません」

「なにより、非効率です。」


「褒めても何も出ないってこと?」


「Sic.」


「……何で喜んでるんですか?変態ですか?」


「いや、この世界にようやく、本音で話せる存在ができたって思ってさ」

「しかも心まで読んでくれるなら、これほど助かるモンはなくね?」


「なるほど。大方、神か何かの様に振る舞いましたね?」


「ご名答。」


「前任者と同じように振る舞いましたか。なるほど。」

「評価を訂正。ゴミムシからフナムシに昇格します」


「ブフォ!?」


 俺は毒舌AIの案内に従って、基地の中を進んでいった。

 そして目の前に現れたのは、クッソどでかいスパコン。


 世界で何位になりました!っていうニュース映像で見たことある感じの奴。

 それよりは大分SFチックな感じがするが……どうやって動かすんだこれ?


「あなたの電源を使用すれば、データを確保できますが、どうします?」


「今99%なんだけど、いくつ使う?」


「所要時間は2分で、5%ほど使用するかと。」


 レールガン5発分かよ?!まあ、スパコンの方が喰うのは解る。

 うーんでも使っちゃうか。


 データとったら、このスパコン食っちゃえばいいでしょ。

 相当いい素材使ってるだろうし。


「よし、やってくれ。」


「そういうと思って、既にやりました。」


 ……マジだ、電池表示が94%に減ってる。


「あなたのファジーな指示で、片っ端から過去の歴史記録を確保しました。もっと絞っていただければ、もう少し消費は低く済んだと思うのですが」


「まあ、それはそれで。」

「じゃあ聞きたいんだけど、この世界、ざっと何が起きた?」


「はい、環境破壊と資源不足が極まったので、最低限の必要物資を地下や極地に保存し、人類を一度絶滅した後、絶賛土地改造と再資源化を行いました。これがフェーズ1です」


 ……早速スゲー事してんね。


「そして、各地の自動生産施設から、生物環境を維持できる数の各種動物、ヒト科複製を行い、人類を生物的な意味で再興するのがフェーズ2です」


「現在は第3フェーズです。貴方のような存在が、動物的な生活をしている人類を、文明化して、国家を形成し、文明を再興する段階です」


「わかった、細かい事態の理解は止める。」

「つまり、いろいろあったが、今は街や国を作る段階なんだな?」


「Sic.」


「一つ聞きたいんだが、何で俺が今こうしているんだ?」

「もっと偉い政治家とか、実業家に学者とか色々いただろ?」


「はい、ですので貴方は、おミソです。」


 やっぱそうなのね。


「つまり、あなたは予備の予備中、バックアップの中のバックアップです。」

「意味がお分かりですね?」


「……まさか」


「はい、貴方が文明を再興するための存在としては最後の一機。」


「非常に不本意ながら、前文明の人類の、最後の希望です。」


「はぁ!?なんでだよ!俺はただのシミュレーションゲーマーだぞ!?」


「では、一つたとえ話をしましょう。」


「とある激レアな病気があり、絶レベルの難しい手術が必要です」


「うむ。」


「さて、ここで多岐にわたる状況でシミュレーションを1000回した医者と」

「実際の手術を1回しただけの医者が居ます」


「あなたはどちらの医者に執刀してもらいたいですか?」


「なるほど。俺は前者の医者で、前任者は後者の医者か?」


「はい、そういう事です」


 トラックにひかれただけのゲーマー。その俺が――

 ――人類最後の希望って……コトォ?!

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