倫理観以外のクオリティ、どうなってんだ?

 威力を見せつけた俺は、とどめとばかりに、俺たちは鉄砲を分解して見せた。

 その部品点数の少なさと、生産量をアピールする。


 整備性についてのアピールも、したかったのだが、できなかった。

 連弩は熟練兵ですら、分解、組み立てはできず、職人任せらしい。

 なので、そもそもの比較ができなかった。


 デイツ王と貴族たちの前で、鉄砲のメリットは説明できたと思う。

 武器を扱ったことのない侍女でも扱える簡単さと威力。そして、あくまで連弩と比較してだが、生産が容易という事。


 オーマの連中は、一通り俺のデモンストレーションが終わった後、目をぎらつかせる連中、頭を抱える連中、特に何も考えずに、侍女に菓子をねだる連中など、てんでバラバラだった。


 うーん、貴族には見込みのあるやつもいるが、玉石混交って感じだな。

 特に菓子をねだってる連中。この期に及んで、この問題意識の無さ、マジでどうなってんだろうな。


 頭を抱えているのは、たぶん連弩の生産に関わっている連中だろうな。

 ちょっと彼ら向けの話をしてやるか。

 この中で一番のチャンス持ちは、むしろアンタらですよええ。


「このようなシンプルな部品だけで、鉄砲はできている。むしろ連弩より簡単な作りといって良い。我らはこれら、部品の生産をオーマに依頼したい」


「おい、どうおもう?」

「うちはのるぞ!」

「あっずりぃ!うちもだ!やらせてくれ!」


 よしよし、貴族の中でもちょっと服のグレードが一段下の連中は、なかなか乗ってきているな。

 チャンスをつかもうっていう連中がいると、話が速くて助かる。


 デイツ王にもういっちょダメ押ししとくか。


「……デイツ王よ、この鉄砲再軍備もそうだが、部品の大量生産は、職人でなくてもできる。つまり、こたびの行き違いで未亡人となった者たちの生活の糧ともなる」


「ッ!そこまで考えておられたのか!?」


「……領内の安定も必要と思うが、いかがか?」


「でしたら、むしろデイツ王の名において推し進めましょう」


「……賢明な判断だ。」


 いやあ、我ながらよくいうわ。誰のせいや!!誰の!!


 まー、人間連中もあれだけ好き放題していたのだから、もっとしばいてもいい気がするが、あんまりやり過ぎて、報復の連鎖で、泥沼にもしたくないのよね。

 いやーほんとに難しい所である。


「あの!機人様!こういうのはどうでしょうか!機人様のその、お手の物を参考にしたのですが!」


 俺に近寄ってきた若い貴族。見せてきたのは、木炭でササっと羊皮紙に書かれたスケッチ。3面図!?ドワーフでさえ1面図だったのにこいつ……できる。


 そこに書かれているのは、6つの銃を束ねて回転式にした、連発銃だ。


 ええ!?見せた端から、もう連発銃のアイデアが出て来たよ。いや、俺という見本があるし、連弩というコンセプトがあるんだから、当然生まれる発想だが……。

 ……あいかわらず、倫理観以外のクオリティ、どうなってんだ?


「……お主の名を聞こう」


「ハッ、チョコ伯領のポルシュといいます!」


 たぶんだが、俺が思った以上にムンゴルの駆逐は、早く進むだろうな。

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