見せつけるだけ、見せつけるターン

 俺は教会の地下にあったテレビやらを、スーパーの安売りポテチみたいに頬張る。

 片手に抱えて、ひょいパクと食っていくと、モリモリと資源のカウントが上がっていく。


 ありがたや~ありがたや~、だ。

 これだけの量を、エルフ達や自分だけで集めていたら、どれだけの時間がかかるのか、分かったもんじゃない。


 素材の在庫ががっつり増えたので、近代兵器を使うだけの余裕が大分出てきた。

 いやー、これは嬉しい。


 そして、この地下倉庫には、とある掘り出し物があった。

 明らかにグリップが人間サイズではない、電柱みたいな太さの手持ち兵器。


 UIに表示される名前は『MK3電磁砲』。つまりは、レールガンだ!!


 MKなんたらというのは、どうやら俺用の武器の命名なんではないだろうか?

 持ってみるとやたらにしっくりくる。


 構えると俺の体を通して武器に火が通ったのか、ほのかに銃身が青く光る。

 おお!いいぞいいぞ!これのレールガンを作った奴は、ユーザーが何を求め、何がカッコいいとおもっているのか、よくわかっていらっしゃる。


 弾体はクラフトメニューからでも用意できるようで問題はない。

 しかし電源、こいつが怖い。

 俺の体からとっているのがちょっと不安なのだ。

 あんまり調子に乗ってバンバン撃つと、俺が停止したりしないか?。


 一発撃って即停止とかならないように、流石に警告は出るよな?むしろ出てくれ。


 俺の電源がいつまで持つのか、それがわからないんだよな。

 UI上の右上には電池の表示があって、それは100%の表示のままだが……。

 表示が壊れてるってわけはないよな?単純にすごい持ちがいいのか?


 とはいえ、念のためにもう一個くらいは電源の供給源が欲しい。

 俺がこの世界に降り立って、ミリアに出会った時に、彼女からもらったもの。『MK3核融合バッテリー』。あれの予備が欲しいな。

 

 予備が無いと、ちょっと心の平穏がヤバいわ。心臓ないけど。


 バッテリー自体はクラフトもできるようなんだけど……、ここの倉庫の中身を食ってもカウントは上がらず、肝心の材料がぜんっぜん足らない。


 うーん、冒険者を食って上がったきり、それ以来さっぱりだ。

 ちょっとは焦るべきか?


 ま、焦ったところで、メドが付くわけではない。俺は倉庫を空っぽにして、リフトに乗って地上に戻った。


 あれだけ喰ったのに、地上に上がっていくリフトには、俺の重量が変化したようなそぶりが一切ない。俺自体が、かなりのオーバーテクノロジーだな。

 超科学は魔法と見分けがつかないとはいえ、流石にやり過ぎでは?


 地上に戻った俺は、オーマの兵士に囲まれるわけでもなく、自由に街の中を歩けた。それは城壁に上った兵士が、俺なんかより重要なものを、壁の外に見つけているからだ。


 <ジャーン!ジャーン!ジャーン!>


「げぇっ!ムンゴル!!」


 壁の上の守備兵は、明らかに慌てふためいている。まあ、街中で大爆発起こしたし、補充兵の民兵は俺がハムの人にしちゃったからなぁ……。


 しかしムンゴルの奴らも、あれだけ痛めつけたのに、もう再編してやって来たのか……。意外と頑張るな。

 この時、俺の中であるプランが立ち上がった。

 よし、やってみるとするか。

 

「デイツ王よ!教会が不正に集めた、我らの物は受け取った!!」


「このまま帰っても良いのだが、もし、おぬしらが今後も遺物を集め、我に差し出すというのなら、ムンゴルに我が力を示しても良い」


 わざわざ落ち目のデイツ王に、一本のクモの糸を垂らしてやる。

 意味はズバリ、お前が今後も王のままでいるには、教会の代わりに、俺が後ろ盾になってやるけど、どうする?というものだ。


 ワサビをチューブ一本喰わされたような顔で、デイツ王は俺に答える。

 まあその気持ちはわかる。大体俺のせいだからな!


「あいわかった!」


 よし、交渉成立。ならば仕事に取り掛かるとしよう。

 機人の力、それを見せつけるだけ、見せつけるターンだ。


 俺はレールガンを担いで、走り、エルフ達に合流する。

 マルチミサイルを含め、弾薬の補給は地下で済ませた。フルパワーで行こう。


「へぇぇぇ!機人さま!なんかすごい数が来てます!」


 ミリアの言う通り、凄い数だ。万単位の騎馬兵が土煙を上げて迫ってきている。

 砲台陣地が破壊されたので、連中はてっきり打って出てきたオーマの野戦軍とでも戦うつもりだったのだろう。


 だが、あいにくとこちらは、たった20人のエルフと、機人1体だ。

 もてなし役が少なくて済まないが、全員分は相手してやるから、心配するなよ。


「うむ、オーマでは張り合いが無くて少し退屈していたところだ。」


「ケケ!やっちまいましょう!馬に乗ったくらいで、ヒトブタには変わりません!」


 ミリアは配下に指図して、トラックの荷台に3台の迫撃砲を並べる。

 これはマルダの海軍に撃ち込んだ兵器だ。

 貴重なマルチミサイルの代わりになると思って作ってみたが、期待以上に役立ってくれた。


「ガンガン打ち込みますよ!」


 ポン、ポン、と、花火みたいな音をさせて、8センチの迫撃砲弾が降り注ぐ。

 迫撃砲弾は地面に当たる前に、空中で爆発して無数の破片をまき散らす。

 未来の砲弾の効率ってば、えげつないね。革や布の鎧でしか、体を保護していないムンゴルの騎兵は、爆発を中心に、まるく広がるドミノ倒しのように崩れていく。


 迫撃砲の攻撃に参加してないエルフはアサルトライフルで射撃して、迫撃砲を当てるまでもない、中途半端な集団を蹴散らしていく。

 ムンゴル騎兵に馬で近寄られても、こちらにはトラックの機動性がある。

 連中の得意の引き撃ちをこっちがやるのだ。


 なんか余裕そうだな?

 駄目押しに、新しく手に入れたレールガンの試し打ちと行くか。


 電柱みたいな太さ、と言ったが、レールガンの銃身、それ自体は鉄砲みたいな単純な筒ではない。鉄橋みたいなトラス構造の砲身に、なんかのパーツが付いた、すごいSFチックな見た目をしている。


 こいつが俺が構えると、ブィーンとかいいながら、青い光を放つのだ。

 オジサン嬉しくなっちゃうね。そうそう、こういうのでいいんだよ。


 ムンゴル騎兵の集団に向かって、照準を定め、引き金を引く。

 刹那、パッっとカメラのフラッシュみたいな閃光がして、俺の付近と弾道を、凄まじい衝撃波が襲う。海を割るように、大地を衝撃波が切り裂いていき、その進路上のムンゴル騎兵を、爆圧だけでトマトペーストにしてしまった。


 狙撃兵器かと思ったが、これは完全にMAP兵器だな。


 ちらとUI右上の電池アイコンを見る。99%……!

 あっっっちょっと減ってる!!


 さすがにこの威力、撃ち放題とはいかないか……あとはミニガンで始末しよう。


 戦いは、数時間で決着がついた。歩兵隊を伴わないムンゴル騎兵は、俺たちの攻撃でさんざんに打ち破られ、砲台陣地まで到達できずに、大地にその屍をさらした。

 ムンゴルの騎兵は、思った以上に防御力が無い。

 まだもうちょっと、冒険者たちやオーマの騎士たちの戦列の方が耐えていた。


 この戦いで、俺たちは2万以上のムンゴル兵を殲滅。

 この余りの出来事にオーマの貴族が次々と帰順することとなった。

 俺は電子製品の貢物を約束させる代わりに、彼らの本領を安堵する。


 両者とも大打撃を受けたので、しばらく軍事衝突は怒らないだろう。

 俺はポトポトに戻り、再度内政に取り掛かることにした。

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