ムンゴルの事を聞いてみよう

 無人機をポトポトに自動操縦で帰還させながら、俺は神聖オーマ帝国を攻めている連中の情報を集めることにした。


 まずはオーマの蛮族騎士から聞き込みするか。

 エルフと違って、若干威圧しつつやった方が良いか?肉食動物たちのボス、群れのボス、うん、そんな感じで行こう。オサ!オサ!ってかんじで。


「……騎士どもよ、オーマが焼かれておる、だが我ではない、牛の旗印の軍勢だ」


「なんと!その旗印、ムンゴル帝国のモノに違いありますまい!」

「おのれ!弱まった隙を狙い、仕掛けて来たか!」

「機人様!ぜひ我らに先鋒をお任せください!」


 話と判断が速いな!逆にお前らそれでいいんだ?!


「うむ、我も神聖オーマ帝国は完璧な焦土とするつもりであった」

「しかし、貴様らのような者がまだいるのであれば、我はこの力をオーマのために振るう事もしよう」


 俺はいつかの機能、ゲーミング発光をする。体の各所が7色に光るだけなのだが、この時代の光は、たいまつとロウソクのオレンジ色の炎だけで、人工的な光はない。


 全く無意味な機能かと思ったが、蛮族相手には効果てきめんだ。

 おお!ナントカのエレメント!ありがたやありがたや!と拝んでくれる。

 ゲーミングPCの謎の機能もこうしてみると、人間の奥底に訴えるものがあったのだろうか?いや無いな。自作PCのは飽きてすぐ切ったし。


「エルフたちは主らを憎んでいる。そして我は本来、エルフ側に立つ存在だ。そのことを、ゆめゆめ忘れぬように」


 あとは、調子に乗んなよ?とクギも刺しておく。「へへぇー!!」と平伏してるし、しばらくはこれで様子見だな。なんか変なことしだしたら頭からかじり付いてしまおう。


 あとはもうちょっとムンゴルの話を聞いてみるか。


「よしなに、さて、貴様らに問いたいのは、ムンゴル帝国とはどのような国か?」


「はは!恐れながら申し上げます。ムンゴルは遥か東はムンゴリアにある、遊牧民の国であります。馬と羊を飼い、生まれながらにして馬に乗り、弓を引く者らにございます」


「ムンゴル人は我らと同じく血肉を好みますが、やつらは親兄弟であっても死すればその兜を鍋にして肉を焼き、食うと聞き及んでいます」


 うーん、たぶんお前ら。ムンゴル人の事を非人道的って言いたいんだろうけどさ、お前らも大概だぞ?!エルフに何したかもう忘れてんのか!?


 ふう、頭が痛くなってくる。頭ないけど。


 さて、もう一度やることを整理しよう。こいつらの意志がどうあれ、俺の目的は電子基板を直接調達するか、どこにあるかの情報の収集だ。


 それは何故か?電子基板の有無で、俺のクラフトできるモノの性能が、大幅に上がるからだ。冒険者たちから色々な鉱物を小粒にもらったが、まだ足らないものがある。


 CEM-3、FR-4 、FR-5とかいう、全く意味のわからん素材だ。

 ……逆に、わかる奴いんのこれ?

 これが何もので、何からできてるのか?俺の知識ではさっぱりだ。

 さらにいえば、これのカウントが上がったのは、エルフ達の里、その初代のカルト教会にあった電化製品の電子基板だけだった。


 なので電子基板そのものを手に入れる必要が、俺にはまだある。


 そして、その情報を持って居る可能性の高い、神聖オーマ帝国の王族、聖職者、とりわけその中でも上位の連中は、聞き込みが終わるまで死んでもらわれると困る。


 問題は、エルフを助けた事とオーマを助けること、この二つが矛盾することだ。

 だがこの矛盾は解決可能だ。オーマを助けることが、最終的に、エルフを助けることになる、その説明ができればよい。


「……ミリアよ、わが眷属よ」


「へぇぇぇぇ!何なりとお申し付けください!第一の眷属にしてポトポト王!ミリアちゃんですよ!」

もう突っ込まないぞ!いや、心の中でしか突っ込んでないけどさ!


「……我はこれからムンゴル帝国とオーマの戦いに介入する。これはオーマを助けるように見えるが、その真意は奴らが奪った遺物の奪還が目的だ」


「と、いいますと?」


「オーマの持つ遺物が、我のエルフを助けるという目的に必要なのだ。オーマの敵を討つが、我がエルフに寄り添うという真意は変わらぬ。」


「へぇぇぇ!あの、オーマの遺物が目的なら、奪うだけ奪ったら、ヒトブタは皆殺しでいいんです?」


「無論だ。騎士たちのように利用価値があるのならば、その限りではないが」


「ケケケ!機人様も、なかなかにしたたかでいらっしゃる!」

 ミリアの笑い方ぁ!何この子コワイ!


「……ひとまず、矛先を神聖オーマ帝国から、一時的にムンゴル帝国に変える。里のものに、委細を伝えよ」


「へぇぇぇ!」


 さて、ここから実際、どう動いたものかな?

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