第2回戦の始まり
最初の大群を迎撃してから数日して、俺は無人偵察機を飛ばして、周囲を偵察をすることにした。もはや朝の日課になりつつある習慣だ。
しばらく飛んでいると、川に異変があるのを見つけた。
ずんぐりむっくりとした、タライみたいな形の帆船が、いくつも川を遡っているのだ。2本マストに四角い帆を張り進んでいるが、そのいくつかは、もうポトポト側に向かって兵士を降ろしている。
神聖オーマ帝国にはこんな海軍力まであるのかよ!?倫理観がチンパンジー以下のわりには、中世とは思えないほどにクオリティの高い連中だ。
これは第2回戦の始まりって感じだな。
渡河で手ひどくやられたから、ちゃんと対策を打ってきたのは褒めてやろう。
分散して上陸させて、こちらの迎撃を飽和させるつもりだな、あれは。
通常、こういった散らばって行動するっていうのは中世の兵士が苦手とするところだ。まとまって動かさないと、チンパンジー共は給料以上のものを求めて、そこらを勝手に略奪し始めるからな。
しかし、ポトポトの元の街が吹き飛んで、ロクなものが無い今は、それがこいつらが命令に律義に従う条件になってしまっている。勝手に隊列を外れたら、食い物が無くて、野垂れ死に確定だからね。
あれ?割とヤバいかもしれないな?
再結集を程々にして、タイミングも方向もバラバラに、四方八方からポトポトに攻めかかられると、こちらは結構きついぞ?
無人偵察機を川に沿って飛ばし、俺は連中が荷揚げをしている様子を眺める。
連中が荷揚げしているもののなかに、いわゆる投石器を発見した。
4つの車輪に、ねじり式で動く、先端に籠のついたアーム。俺が前世で、中世を舞台にしたシミュレーションゲームで、何百回も無数の町や村、世界を破壊尽くした時に使った相棒がそこにいた。あの姿を見間違えようはずもない。
うおおぉ!ついに来るもんが来た!テンション上がるなあ~!
とはいえこっちが使うんじゃなくて使われる方だが。さてどうしたもんかね。
まず、俺たちに海軍力はない。モーターボートなんかあれば、機関銃や火炎放射器で対処することもできるだろうが、そんな準備はしてない。なのでこれは却下だ。
水際での攻撃ができないなら、内陸部で始末するしかないな。
上陸中の今に、トラックを使って小規模な襲撃をするのもいいが、できるだけまとめて相手をしておきたい。長時間の戦闘が続くと、エルフ達に疲労がたまるし、
バラバラに対処してしまうと、あとで死体を拾っていくのが大変だしな。
うーん……常識的に考えれば、これだけ散発的に上陸したなら、統制を回復するためにも、集合をかけて野営するはずだ、そこを狙っていこう。
となるとここは、よし、伝統と信頼の「夜襲」に決まりだな。
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