勝ってナントカのアレをああしよう

 まず緒戦は大勝利といって良いだろう。

 敵騎兵の討ち漏らしが多少出たが、彼らには兵に恐怖を伝播させるメッセンジャーとなってもらうことにする。


 まあ戦いは問題なかった。問題はこっちだな。


「宴よー者ども宴よぉひゃっひゃっひゃー!!」


 俺が見つめているのは、両手にたいまつをもって、中腰で左右に振り回し踊っているミリアだ。完全な大勝利にブチあがってしまっている。


「イヤッハー!ヒトブタ共の頭ねじ切って玩具にしますわよー!!」


 うーん、これは逆に良くない。士気が上がるのはいいが、上がり過ぎるのも考え物だ。勝てる戦という先入観がついてしまうと、大体ろくなことにならない。

 こういうのは、ひょっとしたら勝てるかも?くらいでいいのだ。


「……ミリアよ、それくらいにしておくが良い。」


「あっはい」ミリアはいつのまにか用意したのか、水を張ったバケツにたいまつを突っ込んで「ジューッ」っと音を立てて火を消し、普段のテンションに戻った。


身代わり早!いや、そういうことなんだけど早すぎて逆に怖えよ!!


「つい勝利で舞い上がってしまいました。戦には自制心が重要という事ですね!」


「うむ……」


「おら!お前ら何時まで遊んでんだ!仕事だ!仕事に戻れ!」


 ミリアはさんざんあれだけ盛り上げておきながら、勝手に鎮静化して、えぇー?と、困惑するエルフ達をローキックでけ散らす。

 メリハリがあると言えば聞こえがいいが、あり過ぎてついていけんわ!


「ふふ……ミリアちゃんは機人様が悦ぶとおもってしてるだけよ……」


なんかデドリーのいう喜ぶのアクセントが微妙に違う気がするがまあいい。


「うむ、その忠誠心やよし、しかし我は喜びの為に導いているわけではない。」


 そうだ、別に俺がエルフに好かれる必要はない、そのほうが便利ではあるが。問題は俺がこの世界ではとんでもない異物ってことだ。この世界の常識を断ち割る存在。

 当然世界のすべてが敵になってぶっ飛ばしにかかってくるだろう。

 だから多分これは自衛のためだ。世界を間借りする為、ちょっとしわ寄せが行く。ただそれだけのことだ。

 そのためだけに結構な数が死んだかと思うが、彼らも似たようなことをしているのだ。やり返される番が来たと思ってもらおう。


 うーん、我ながらかなり人間味が無くなってきてるな。この機械の体の機能なのか、もともとおれがサイコパスだったのかわからなくなってくるぞ。


「まずはエルフが安全に暮らせる国を作る。ポトポトはその礎だ。いわばこの地は、城を立てるための最初の積み石だ。その石が揺らぐようなことがあってはいけない」


「へぇぇぇぇ!機人さまは世界の征服を目指しているのですね!」


 いや、流石にそこまでは目指してねえよ!行間を読み過ぎぃ!

 あくまでこの地域の確保だから!世界征服とか言えるのは小学生までだからね!


「そこまでは言っておらん……」


「はは!まずは高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対応ですね!」


 それは何もしないという事ではないのか?

 いや、何もしないというのもたまにはいいか、今日はあまりにも殺しすぎた。


 焚火を見つめながら、何も考えないことにしよう。作戦を練るのはまた明日だ。

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